ところが、彼女はそれほど残念がることはなかった。
「英国ではVATが20%もかかっているから、旅行者が取り返したい、っていう気持ちは分かるけど、日本はわずか8%でしょ? そのくらいだったら、お店や空港での手続きで時間や体力を費やすよりものんびりと旅行したい」
実際に観光庁による統計を見ると、欧州からの訪日客のうち、免税手続きを行った人のパーセンテージは1ケタ台と極めて少ない。日本でのショッピングには興味がないのかもしれないが、免税手続き実施率が30%程度に対するアジア諸国の訪日客と比べてあまりに少なすぎる。
手続きの方法が個人訪日客に伝わらない
欧州の主要3カ国(英国、ドイツ、フランス)にある現地の日本食材店は、日本人よりもむしろ現地人客の来店が目立っている。そして、現地では日本食品を買い求める人々のマーケットが一定規模存在している。こうした国から日本に来る、ということは日本好きは一程度おり、訪日時に日本のものを買いこむ人もいるはずだ。にもかかわらず、日本で免税手続きをする人が極端に少ないのはなぜなのだろう。
別の統計を見てみよう。
観光庁は「訪日客に占める個別手配旅行客の割合」についての国別統計を毎四半期ごとに発表している。
これを見ると、前述の英独仏3カ国からの訪日客のうち、8割以上がいわゆる“個人旅行”で日本に来ている。パックツアーにでも参加していたら、ガイドさんが事細かに免税手続きについて説明してくれるのかもしれないが、個人旅行者がそういう情報を得るのは難しいのではないか。
つまり、せっかく簡素な免税スキームがあるのに、個人で訪日する旅行者に全容を理解してもらえていない可能性がある。前出の英国夫人は「8%なんか惜しくない」と強がっていたが、手続きが簡単と知っていればたとえ8%といえども、積極的に税金分を取り返したかもしれない。
以上に述べたように、訪日客に対する消費税の免税制度は、他国での申請スキームと比べて方式は極めて簡単。ところが、旅行者からみれば「あまりに他国と状況が違いすぎて、どういう手続きの流れになるのか簡単に理解できない」という一面がある。
関係官庁は「アジアからの団体客にさえ税金を返すことができれば、政策として十分及第点。地方創生にも寄与」と、満足しているかもしれない。しかし、「日本の免税申請は世界に類を見ない簡単な手続きで終わる」と欧米からの訪日客に対しても積極的に伝えたら、ずいぶんと強力なインセンティブとなると思う。いかがなものだろうか。
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