料理が運ばれてくると、よしふみは自分が頼んだものを自分のところに引き寄せ、おいしそうに食べていたので、きみえも自分が頼んだピザとサラダを食べるようにした。
会話は展覧会で観た絵の話になり、よしふみは作家の生い立ちや、なぜあの作家の絵が魅力的なのか熱く語っていた。また、きみえはどんな絵が好きなのを尋ねてきた。
そこから、休日の過ごし方や趣味の話にもなった。出かけたことのある海外旅行にも話は及んだ。
きみえは、話しながら思った。
(これまでお見合いをしてきた男性たちは、こんなふうに自分から話題を振ったり、話を展開させたりする人はいなかった。話をしているぶんには楽しい。ただ、すべてにおいてキレイに割り勘なのが引っかかる)
そんなことを考えていると、よしふみが言った。
「そのピザ、1枚もらってもいいかな」
「どうぞ」
「よかったら、僕の料理も好きなのを食べてよ」
仮交際とはいえ、これから未来に結婚を見据えて交際に入った相手だ。そして今日は初めてのデート。一緒に食事をしているのにシェアもせず、相手が買ったものを食べるときには、「あなたの料理、食べてもいいですか?」と、ことわりを入れる。
デートというよりは、“会社の同僚と食事に来ているような気分”になっていた。
デートで明朗会計すぎて…
そして、ファーストデートを終え、きみえは交際終了を出してきた。きみえは、筆者に言った。
「悪い人ではないのだけれど、おそらく彼のことは男性として好きにはならない気がしました。明瞭会計なのはいいのだけれど、なんだか“ちゃっかり感”が拭えなかった。友達ならいいけれど、異性として恋愛感情を抱く相手ではないと思ってしまいました」
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