婚活をスタートさせたきみえだが、一方的にお茶代を出させるのは心苦しく思ったのだろう。お見合いにはコーヒーチェーン店のコーヒーチケットや小さなお菓子を持参し、渡していたようだ。
ある日のお見合いは、ホテルのティーラウンジだった。
そこは、コーヒーと紅茶が、1800円という価格設定だった。見合い相手のよしふみ(42歳、仮名)はそれを知らなかったようで、着席して運ばれてきたメニューを開くと、驚きの声を上げた。
「うわっ、コーヒーが1杯1800円もするんですね。さすが一流ホテルは、高いなー。あ、でもおかわりできるんですね」
きみえは紅茶、よしふみはコーヒーを注文したのだが、運ばれてきたコーヒーをまじまじと見つめながら、一口飲むとよしふみは言った。
「味は、普通。これに1800円も取るのは、ホテルという場所代なんですかね。ただ、お代わりができるみたいだから、2杯飲めば1杯が900円か……」
しばらくはコーヒーの話題から離れようとしなかった。そこで、きみえは苦笑いしながら言った。
「落ち着いた空間ですし、ホテルのティーラウンジは小さな子どもや学生さんはいないじゃないですか。今日はゆっくりお話ができますよ」
お茶代は出すように言われたが…
そしてお見合いがスタートしたのだが、仕事や趣味、休日の過ごし方など、いろいろ話をしてみると、よしふみはフランクな性格で、仕事にも前向きだった。また、多趣味で雑学にも詳しく、会話は楽しかった。
1時間半くらい話し、「じゃあ、行きましょうか」と立ち上がろうとしたところで、よしふみが言った。
「『お茶代は、男性が出してください』と仲人から言われているんですけど、この値段なので……」
何が言いたいのか、きみえは察した。
「あ、私のぶんは自分で払いますよ」
そして別々に会計を済ませ、その日は、用意していったコーヒーチケットは渡さず、そのまま帰ってきた。
このお見合いの一部始終を筆者に報告しつつも、きみえはよしふみに交際希望を出した。
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