大阪「北ヤード」再開発が“最後の砦” 地元・竹中工務店の強い思い入れ

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入札にあたり、“地元組”竹中工務店の思い入れは相当強かったという。近畿圏では、高層ビル1棟の建設でさえ「一大プロジェクト」と言われる。竹中の黒田啓介参与は「北ヤードほど大きなプロジェクトは後にも先にもない」と断言する。社内の一部では、この超ビッグプロジェクトを「オマケ」と評すほどだ。

だがこの北ヤード開発、近畿圏の中小の事業者にとっては、別段、魅力的な案件ではない。ある在阪中堅ゼネコン幹部は「スーパー(ゼネコン)さんが取った仕事はうちに回ってこない」とぼやく。竹中や大林組から外注を請け負っている地元の零細企業にしても、「値段を叩かれ汲々としている」(関係者)のが現状だ。

民間も公共も軒並み減

近畿2府4県の建築着工額(木造除く)は、阪神・淡路大震災の特需があった96年の約5兆6000億円から減少に転じている。今11年は、ピーク時の3分の1以下、約1兆7000億円にまで落ち込む見通しだ。

東日本大震災後、民間工事の要であるマンション着工には、延期・中止が相次いだ。4月の着工は前年同期比46%減と、首都圏(前年同期比12・4%増)に比べ、落ち込みが激しい。「関西経済の後退で消費意欲は元々低下していたが、震災を機にさらに冷え込んだ」と帝国データバンクの和家浩紀氏は分析する(数値は帝国データバンク調べ)。

通常であれば採算を確保できるはずの公共工事にも期待しにくい。大阪府の公共工事は、予定価格を事前公表する方式をとっている。透明性には一定の評価があるが、事業者にとっては「価格競争の激化」に他ならない。予定価格の約7割の価格で落札、プロジェクトが赤字転落することもままある。前出の中堅ゼネコン幹部は「地の利がある大阪は諦め、首都圏のマンションに集中すべきなのかもしれない」と嘆く。

北ヤードの背負う使命

だが、最悪の状況だからこそ、北ヤードの将来に期待する見方もある。「ナレッジ・キャピタルに国内外から人が集結することで、大阪の街がもう一度活性化するのでは」と、竹中の黒田氏。全社の工事量の3分の1を近畿圏でこなす竹中を筆頭に、地場の事業者の思いは切実だ。


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