「危険すぎる山」で"幻の虫"を追うハンターの矜持 クマに30回以上遭遇、妻は大激怒…それでもなぜ行く?
採集のためのライト機材や梯木を車に詰め込み、仕事終わりの20時に自宅の神奈川を出発した。お盆の行楽期のため渋滞にハマり、青森から函館へのフェリーを経て目的地まで18時間もかかった。
現地に入り、細い林道を車で突き進むと、「ヒグマに注意」の看板が横目に入る。車から降りてみると、巨大な糞が落ちていた。
「でかいなんてもんじゃない。そいつを出したヤツを想像しただけでビビりました」
糞は道路脇や細い砂利の林道にも落ちていて、周辺にヒグマが生息していることは間違いない。ちなみに虫オタは、これまで本州ではツキノワグマには30回以上遭遇している。歩いている前に飛び出してきて、3メートルの距離で目が合ったこともあった。
「そのときはケンシロウくん(採集仲間の岩井拳士朗氏)とデカい声で話しながら歩いていたんです。ラジオもかけていたんですよ。全然、熊避け効果なんてないですね。出会ったら道具も全て投げ捨てて、ダッシュで逃げる。向こうも臆病なんで、襲われたことは一度もないです」
だがヒグマに出会ってしまったら命の危険度は格段に上がる。とりあえず車で林道を回りながら、目ぼしい木があった場所で降りてみた。すると近くに大きな罠や真新しい足跡がある。
「やべっ!」と車に戻りそうになるが、脳裏にオオクワガタの顔がよぎった。そうなると「小便ちびりそう」になりながらもやめられない。なんとかヒグマに遭遇せずに済んだが、オオクワガタの手応えもつかめず、初回の探索は撃沈した。
標高が高過ぎたのか?
2度目のトライは2020年の7月にケンシロウと彼の友人との3人で向かった。
「北海道で初めてライトトラップをやったときは、東北あたりのつもりで標高200~500メートルの場所でやったんです。そうしたら高地に生息するヒメオオクワガタが5頭飛んできた。オオクワガタのエリアで、ヒメオオが飛んでくるのは珍しい。ひょっとして、これは標高が高すぎるんじゃねえのか? って思った」
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