「危険すぎる山」で"幻の虫"を追うハンターの矜持 クマに30回以上遭遇、妻は大激怒…それでもなぜ行く?
「カーナビも付いていない車で地図を見ながら行っていたんですけど、右も左もわからない。3年くらい通った頃に、朽ち木を割ったら大きな幼虫が出たんですよ。明らかにコクワやアカアシ(クワガタ)とはサイズが違う。これは絶対オオクワだと思った。それから一気にのめり込んで、夏に図鑑で見ていた台場クヌギの樹液で見つけたときには、これはやべえってなりました」
虫仲間が彼を認める一番の理由は、とにかく自力にこだわることだ。誰かに場所を教えてもらうのではなく、自分の力で生息ポイントを見つけ出す。採集者の多くは空振りを避けるために、実績のある場所を選ぶが、虫オタは虫をゲットすることが目的ではない。
誰もたどり着いたことのない生息地を、自分の力で見つけたいという想い。その探究心は初期から強く、一匹狼のスタンスを築いていく。
山梨の後に挑んだのは福島だった。南会津の街灯回りで採れるという情報だけを頼りに向かうが当時はまだ圏央道がなく、自宅の相模原からだと渋滞も含めて8時間かかった。しかも行ったはいいが、範囲が広くポイントが絞れない。
「檜枝岐(ひのえまた)側なのか、栃木側なのかもわからない。今思えば、栃木側なんて絶対にいない。でも当時は知らないから栃木の塩原から入って探したんですよ。全然見つからなくて、南会津にはいねえんじゃねえかって思いながら、何度も繰り返しました」
最初の1頭が街灯下で採れるまでに、10回以上は通った。オオクワガタ採集を始めた頃は、東北で採れるなんて考えてもみなかった。福島での採集をきっかけに、生息地の開拓が本格的に始まる。
ヒグマの糞にビビる
激レアポイントの一つ、北海道に初めて挑んだのは2015年だった。妻に許可をもらうために「家族旅行に行こう」と誘い、3日後に家族は飛行機で来させることにして、先に自分一人で出発した。
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