「危険すぎる山」で"幻の虫"を追うハンターの矜持 クマに30回以上遭遇、妻は大激怒…それでもなぜ行く?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

北海道ではこの高さでは気温が低すぎたのだ。7月の挑戦は再び空振りに終わったが、エリアを変えれば可能性があるかもしれない。そうなるといても立ってもいられなくなり、8月のお盆休みに3度目のチャレンジを密かに計画する。

ケンシロウを誘うと「仕事の調整がつけば、ぜひ行きたいです」との返事。あとは妻をどう説得するか……。

すでに青森からのフェリーは予約してあるのだが、2カ月続けて北海道に行かせてくれとは言い出せない。悩みに悩んだ末にこう切り出した。

「ケンシロウくんが、どうしても7月のリベンジをしたいらしくて、男として見捨てられない。もう一度北海道に行ってもいいかな?」

「は!? お盆は子どもと出かけるって言ったじゃん。意味わかんないんだけど。アンタの親に電話するわ!」

というわけで、アラフォーの男が妻と両親に滔々と説教されることになった。それでも「もう決まってしまったことだから」と頼み込み、家族は別の機会に必ず旅行に連れていくことを約束して許しをもらうことができた。

ところが、直前にケンシロウから「すみません、どうしても外せない仕事が入ってしまって」と連絡が入る。「マジか!」となるが、今更そんなことは妻には言えない。「一人じゃヒグマが怖ええなぁ」と思いながら単身出発した。

オオクワガタ採集
雪が積もっていても躊躇することなく採集に出かける(写真:松島幸次氏提供)

ついに姿を現したオオクワガタ

8月の再チャレンジでは標高を50メートル付近まで下げてみた。

ライトトラップでは、まず近場にいる小さな蛾が集まり始める。そして小型の甲虫に続いて大型の蛾が飛来し始めると、クワガタの仲間が最も集まる“ゴールデンタイム”の到来だ。

ちなみに北海道はミヤマクワガタの大産地であり、良好な条件下では、開始から数時間で数百の個体が飛来する。ミヤマクワガタのオスは、顎の内歯の形状で3つの型に分けられ、北海道で採れる大型個体は「エゾ型」と呼ばれる。もう一つの特徴として頭部の突起が大きくなり、標本愛好家には人気が高い。

ライトアップ
北海道でのライトトラップ(写真:松島幸次氏提供)
次ページだが虫オタの眼中にはオオクワガタしかなかった
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事