「危険すぎる山」で"幻の虫"を追うハンターの矜持 クマに30回以上遭遇、妻は大激怒…それでもなぜ行く?

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虫オタは紛れもなくトップクラスの採集家だが、実際にオオクワガタに行きつくのは、1%未満の確率だという。これは彼が一度見つけた場所へは、信頼できる仲間を案内する以外に再び行くことがないからだ。

オオクワガタに人生を懸けた男たち
『オオクワガタに人生を懸けた男たち』(双葉社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「よくSNSとかにオオクワガタをたくさん採った画像をアップしている人がいるんですけど、それは採れるところに行っているのだから当然だと思う。むしろ開拓にかけて、10連敗、20連敗、食らっている人の方がよっぽどすごいです」

そこまでして、オオクワガタの新規開拓は捨て難い魅力があるのか?

「もうやばいっすよ! 初めての場所で見つけたときって、涙出るくらいの感動です。キター! って一人で叫びますね」

人も通わぬ山の中でアラフォーの男が一人、拳を握りしめて感動に震える。そして無精髭を涙で濡らしながら、絶叫している姿を想像した。うん、わかるよ。だけど、一般社会では理解してもらえないだろうなぁ。

オリンピックの表彰台に立った気分

「やはり、いろんなところに行かないとわからないですよ。それに人から聞いたポイントだと、自己開拓とは言えないじゃないですか。地名も出せないし、どこで採ったの? と聞かれても、答えられない。自分で採れば堂々と言える」

記念すべき発見をした日には、家に帰るとオリンピックの表彰台に立った気分で、妻に「やったよ! やべえの当てちまったぜ」と誇らしげに語った。しかし、彼女の反応はいつも塩対応だ。

「え、なに? 意味わかんないんだけど。何が新産地よ」

オオクワガタ採集
採集中に車を廃車にしてレッカーを呼ぶ。帰って妻に白状すると焼き鮭を投げつけられた(写真:松島幸次氏提供)
野澤 亘伸 カメラマン/『師弟~棋士たち魂の伝承』著者

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のざわ ひろのぶ / Hironobu Nozawa

1968年栃木県生まれ。上智大学法学部法律学校卒業。1993年より写真週刊誌『FLASH』の専属カメラマンとして活動を開始。主に事件報道、スポーツ、芸能などを取材、撮影。同誌の年間スクープ賞を3度受賞。フリーとしてタレント写真集や雑誌表紙を多数撮影。小学生の頃からの将棋ファンで、著書『師弟 棋士たち魂の伝承』(2018年、光文社)と『少年時代に交わした二つの約束』(2019年、将棋世界)で第31回将棋ペンクラブ大賞を受賞した。ほかに海外取材をまとめた『この世界を知るための大事な質問』(2020年、宝島社)などがある。

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