じわじわ話題「異色グルメドラマ」が心揺さぶる訳 仲村トオル主演の「飯を喰らひて華と告ぐ」

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ドラマのメインになるのは、客が料理を食べながら聞く店主の語りだ。客それぞれが抱える悩みや葛藤を、もっともらしく聞こえる格言のようなことわざのような言葉で例え、彼らの気持ちに寄り添いながら、元気づけていく。

店主は客のことを思う気持ちが強いがゆえに、話が止まらなくなる。そして強烈なスパイスを入れて元の味がわからなくなるかのように、客の本来の悩みを勝手に勘違いし、見当違いなアドバイスをしてしまう。客が勘違いを正そうとしても、自分流に解釈して受け入れてしまう。

しかし、店主と話をしていると、日々の生活に疲弊して閉ざされかけていた客の心がこじ開けられ、前を向かせることにつながる。

店主は勘違いをしながらも、内面に秘める感情を見抜いて心のうちを理解し、彼らに寄り添っているのだ。

変わらない日々の繰り返しを生きてきた万引きGメンは、店主のちょっとした気遣いで非日常を味わい、毎日が明るくなった。クセが強い予備校カリスマ講師は、生きる道を誤らずにすみ、姿勢を正すきっかけを得た。また、食い逃げ犯には、その罪は許し、悔い改めさせている。

『飯を喰らひて華と告ぐ』
『飯を喰らひて華と告ぐ』(C)2024 足立和平・白泉社/「飯を喰らひて華と告ぐ」製作委員会

店を出るときの客たち全員の表情は和らぎ、足取りは軽くなっているのだ。

主演・仲村トオルの怪演

本作は、おいしい料理と店主の強烈なキャラクターが、客それぞれの日常生活における心の機微に触れる。そこで生まれる、勘違いとすれ違いのやりとりの滑稽さが、視聴者を笑わせつつ心を温かくする新たなスタイルのグルメドラマだ。

根底には都会に生きる市井の人々それぞれの人間ドラマがあるからこそ、誰もが共感し、感情移入できる。エンターテインメント性の高い、この夏の隠れた名作ドラマであり、その妙味に気づいた人たちの口コミが広がっている。

本作のおもしろさの最大の要因は、店主役の主演・仲村トオルの怪演に尽きる。言葉を発しなくても、有無を言わせぬ圧を放つキャラクター像を体現できるのは、彼の圧倒的な存在感があってこそ。店主の目力と気迫のこもった顔の圧に、客の誰もが圧倒される。

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