採択相次ぐ!「育鵬社教科書」本当の問題点 「右・左」だけでなく、グローバル視点で課題
――大田区で4年前、育鵬社の教科書を採択した時は、どんな雰囲気だったのでしょうか。何か圧力があったのですか。
後に住民の方から同じ質問を受けましたが、そんなことは全くありませんでした。圧力とか、誰かの息がかかった人が委員にいた、ということはなかったのです。そういうことだったら、対処は簡単です。問題がはっきりしていますから。
4年前の教育委員会で育鵬社が採択されたのは、分かりやすさ、面白さ、そして何となく自信が持てるといった要因からだと考えています。
委員は学校の校長先生を経験した方、校医さん、民生委員や人権委員を歴任してきた方、PTA活動を熱心にやっていた方などで、地域のこと、子どものことを真剣に考えている方ばかりでした。こういうメンバーで自由に議論した結果、採択に至ったのです。つまり、教育委員会の出した結論は、世の中の雰囲気をよく表している、ということです。
――今年8月初旬、大田区の教育委員会は、今後4年間使う教科書を決めましたが、そこで選ばれたのは東京書籍でした。
教科書はどれもみんな同じではない
区民の関心が高まり、たくさんの意見が教育委員会に伝わったことが大きいと思います。そして、教育委員の皆さんが、真摯にそれを受け止めた。2012年5月に区民の方が主催した講演会で、教科書採択に関する自分の考えをお話しました。講演録を小冊子にまとめたもの(*)を、一緒に教育委員を務めた同僚たちにも送りました。陰で負け惜しみのようなことを言うのではなく、オープンな場で、お互いの考えを交換したかったからです。
今回の採択にあたり、区民の関心は高く、4年前の10倍、1382通もの意見が寄せられたそうです。学校からの意見も28校全校から寄せられ、いずれも育鵬社や自由社の採択に反対するものが多数だった、ということです。
最後に読者のみなさんにお伝えしたいことがあります。それはグローバル化する中では、よその国の人がどういう歴史観を持っているか、知る必要がある、ということです。グローバル・スタンダードで、太平洋戦争がどう考えられているか知ることが大事です。
教育は人を作ります。次の主権者を作るのにふさわしい教育はどんなものであるべきか、ぜひ、関心を持ち続けてほしいと思います。
教科書はどれもみんな同じではなく、読んでみると違っていて面白いです。教科書は一般書店には売っていませんが、インターネットで検索すると、入手方法はすぐ分かりますので、ぜひ一度読んでみてください。
(撮影 : 今井康一)
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