採択相次ぐ!「育鵬社教科書」本当の問題点

「右・左」だけでなく、グローバル視点で課題

――自国の権力が及ぶ範囲を拡大するため、軍事力を用いて他国を侵略したり、それを推進したりするような考え方を「帝国主義」と呼びますね。当時、ヨーロッパ各国はアジアやアフリカに植民地を持っており、日本はそれに追いつけ、追い越せで必死でした。

この事実は、一定の教養・知識を持つ人にとって「常識」ですから、グローバルに通用する教育を求めるなら、このキーワード抜きに20世紀の歴史を語ることはできません。右、左という思想・価値観の問題を抜きに教育の質、水準という点からも危ういのでは。

 すると、太平洋戦争やその終結に至るくだりは、編集方針の違いがよりはっきり出ているのでしょうか。

沖縄の問題に関しては、書いてある内容が正反対という印象を受けました。帝国書院は、日本軍によって食料を奪われたり、安全な場所から追い出されたりして犠牲になった住民の様子が書かれています。「最後の一兵まで戦え」という命令を残して自害した日本軍司令官の話もあり、犠牲者が増え続けた理由や責任の所在が分かります。

一方、育鵬社は、沖縄県民の献身的な働きや戦争の悲惨さを描いてはいます。しかし、命令が残っていたために被害が拡大したことには触れられていません。

犠牲者が増え続けた理由や責任に触れない

私は、その戦争の中で立派に行動した人がいた、ということに触れるだけではいけないと思います。負けることが分かった時にどういう指揮を取るか、というのがとても大事で「最後まで戦え」という命令を残して自決するのはリーダーとしては失格ではないでしょうか。自分の美学に殉じるのはよいですが、残った者の命をどう考えるのか。特に非戦闘員の命をどう守るのか考えられない人は、指導者としては批判の対象になるものだからです。そういうことを学ぶのが「歴史」だと私は思います。

――おっしゃる通り、失敗から学ばなくては、歴史を学ぶ意味はないと思いました。現憲法の制定過程についても、価値観の違いが色濃く表れていますね。

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