世界でただ1人「希少種ゴキブリ研究者」の実態 沖縄で採集しお持ち帰り、でもゴキアレルギー
しかし、弁明させてほしい。ここで正直に「ゴキブリです☆」などと元気よく答えてしまったら、キャビンアテンダントの方の精神が耐えられる保証がない。むしろ耐えられない可能性を積極的に考えたほうがよい。
もし、仮に、万が一、キャビンアテンダントの方が屈強な精神の持ち主で持ちこたえられたとしても、私の隣に座った乗客のメンタルが無事ではあるまい。その後約1時間のフライトをバイオハザードな恐怖に震えて過ごさせてしまうのは忍びないではないか。
もちろん、ゴキブリを入れている容器はすべて確実にロックできる構造のものを使用しているし、リュックをひっくり返したところで、1頭たりとも逃げ出すことはない。音も臭いもない。当然、機内持ち込み禁止物でもない。しかしそんな現実的な話は関係ないのが人間の感情というものだ。
土の入った容器にたまたま…
そして、土が入っているというのは噓ではない。ゴキブリは土を入れた容器に入っていたのだから。土の中にゴキブリがたまたますべての容器に混入していただけである……という詭弁をこねくり回したくなるが、当時、咄嗟に遠回しに噓をついてしまったことは反省している。
機内持ち込みせずとも、預け入れ荷物でクチキゴキブリたちが元気に手元に返って来ることがわかってからは、なるべく預けるようになった。
クチキゴキブリは読んで字のごとく、朽木の中に棲み、朽木を食べて生きているゴキブリである。彼らは、ふだん読者の方が遭遇しているであろう「屋内に出没する黒い影」とは違い、速く走れないゴキブリだ。
私は九州大学理学部に入学し、大学4年生で卒業研究を始めたときから、この本を執筆している現在に至るまでの約7年間、クチキゴキブリを研究してきた。日本には、九州・屋久島にエサキクチキゴキブリ、奄美以南にタイワンクチキゴキブリの合わせて2種のクチキゴキブリが生息する。
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