――『NARUTO-ナルト-』は、岸本先生自身の人生観が色濃く反映されているというのは、ファンには有名な話です。今回、ナルトは火影としての仕事に忙殺され、息子のボルトと触れあう時間が取れず、ボルトが不満を募らせる、という内容となっています。これは週刊連載時代の岸本先生が反映された物語なのではないかと推測したのですが。
そのとおりです(笑)。うちの息子は、ボルトほどかみついてこないですが、それでも実体験の方が、リアリティがありますからね。実はつい先日も、この映画の試写会と重なってしまい、息子の誕生パーティーに遅刻してしまいました。この作品はまさに僕だなあと。今までもそうでしたが、本当に自分の経験を反映させているという感じがありますね。
成長したナルトを描きたかった
――本作では、落ちこぼれ忍者だったナルトが忍者の頭領である火影となり、落ち着いた大人の男へと成長を遂げました。このナルトの成長には驚く観客もいたのではないかと思ったのですが。
人間というのは実際にいろいろと経験していくうちに変化していくものだと思うので……。そこはうそをつかないで、あえてやってみようと。あまりはしゃがない、大人になったナルトを描きました。だからナルトっぽくないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、さすがに大人になって、しかも火影にまでなっているのに、キャッキャ言っていたら、それはダメだと思うんです。
本来、漫画的にはキャラクターを変えるのはよろしくないと言われています。読者に愛着があるものが変わってしまうわけですから。でも僕は、この映画で『NARUTO-ナルト-』は終わりだと思っているので、息子の問題を抱えた、成長したキャラクターとして描こうと思ったんです。
――ナルトのアクティブな部分はボルトに受け継がれていました。そうすると、ボルトを主人公にした新シリーズを見たいという声も出てきそうですが。
ただ、ナルトが大人になるまでを描ききったという感じがあるので。またボルトを主人公にしてシリーズを始めてしまうと、また同じことを繰り返してしまいそうで。そこはなかなか踏み切れないですね。やはり自分の中では、新しい何かを描けないと、意味ないのかな……と。
――世界中にファンがいる『NARUTO-ナルト-』ですが、世界を意識したことはありますか?
意識したことはないですね。意識したのはアニメ化された時くらいです。その時は世界的に売りたいなという思いがありました。だからアニメーターさんは、『人狼 JIN-ROH』などで世界的に知られている西尾鉄也さんにお願いしたいなと思っていました。西尾さんのラインで、キャラクターデザインをやってもらえれば、外国の方も親しんでくれるのではないかと思ったんです。ただ、やはり西尾さんはお忙しい方なので、やっていただけると決まった時は夢のようでしたね。
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