――今回の映画作品は岸本先生が脚本を担当されたんですよね。
連載が終わっているから、かなり入り込んでやりますよと宣言していたんです。今まで週刊の連載に割いていた時間をそのまま映画に使えるなら、1カ月くらいでできちゃうかも、なんて甘い計算まで立てていました(笑)。しかし実際にやってみるとそんなに簡単なものでもなかった。ただ、絵を描かなくてよかったので、そこだけは楽だったかもしれないですが。
――脚本は言葉でつむぐものだと思うのですが、時には絵を描きたくなったりはしなかったんですか?
実はいくつか頭の中にイメージしたシーンがあったので、そこだけはいくつか絵を描いて。そこのシーンに向かって脚本を書いていました。自分が観たいシーンを決めて、そこに向かってどう進めばいいのか考えたということです。イメージが曖昧なまま描くよりは、はっきりしたビジョンがあるシーンをイメージしてから描いた方がよりいいものになるということは、マンガを描いていた時からよくわかっていたので、映画用にもあらかじめ絵を描いて準備しました。
映画はチームワーク、言い合える関係が大事
――打ち合わせも密にやったそうですね。
ここはこうしようなどと相談をしながら、自分のやりたいことをアイデアにしていきました。僕はきっちりと三幕構成でやりたかったので、時間配分もきっちりと監督に伝えて。これくらいの分数でやってくださいとか、ここまでは何分、ここまでは何分、と細かく決めてしまい、結構むちゃを言っちゃったんです。
山下宏幸監督も全力で取り組んでくださって。体調を崩されてしまい、救急車にも3回運ばれてしまった。本当に頭が上がらないですね。
――まさに身を削って制作された作品ということですね。
いろいろな方々に力の限りを尽くしていただいて。本当にありがたかったです。ストーリーを語るという意味で、映画の脚本作りとマンガのネーム作りは似ています。そこは変わらないのですが、それでも映画作りはチームワークなので、みんなでアイデアを出し合います。
そのためには監督、スタッフともある程度の関係性を作る必要がありました。今回の監督は年下でしたが、才能ある方だったので、遠慮せずに言ってくださいとお願いしました。もちろんマンガの現場でもアシスタント、編集の方は年下が多いものですが、それでも何でも言い合える関係になることが大事になってきます。そうしないと作品がいいものにはならないですからね。ここまで入り込める映画作品は今までなかった。ですから今までにないくらいに愛着はありますね。
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