「売り手市場」下での採用活動の厳しさと、採用担当者の疲弊をリアルに描いており、共感を誘う。選考基準を下げても思うように学生を集めきれない会社の将来性にも展望を見いだせない不安が自身の疲弊をさらに増幅させ、転職したほうが楽になれるかもしれないと思ってしまう姿が切実である。
最近の面接では、応募学生に希望職種や部署を聞くだけでなく、入社後のキャリアプランや将来やりたいことなどを問う例も少なくない。
作者も面接官として学生に同様の質問をしたものの、ふと自分自身がいま聞かれたら何と答えようかと思った瞬間を描いた作品である。
自分自身の就職活動や志望動機は結構いい加減なものだったにもかかわらず、学生の志望動機に厳しい面接官は少なくない。ただし、それは過去の自分を棚上げしているのに対して、今回の作品は過去ではなく、まさに今の自分はどうなのかを自問自答しているところがポイントだ。
人事としての、あるいは管理職としてのキャリアプランなど、明確なものがない自分が面接官をしていていいのか、葛藤と人間味が感じられる一首だと言える。
大谷選手はこんなところにも
ここからは、【佳作】に入選した作品を抜粋して紹介しよう。
【優秀賞】を受賞した作者が別の作品で【佳作】にも入選した。
政府主導の就活ルール上での面接選考解禁である6月を迎え、これまで面接選考を手控えていた一部の大手企業も面接選考を開始し、一気に内定者(重複内定者)が増えていく。
一足早く面接選考を行い、内定出しを実施していた企業からすると、大手企業で内定をもらった学生たちからの内定辞退が急に増え始める時期でもある。それを「急上昇」で表現するとともに、内定辞退率の具体的な数字を出すことなく、「大谷の打率」とすることで「3割強」であることを読者にうまくイメージさせている。
内定辞退率の上昇という、採用担当者にとっては困惑と焦りが入り混じったテーマであるにもかかわらず、スポーツを交えた表現が新鮮で、現実の厳しさを和らげていると言える。
ドジャース移籍1年目から、右ひじ手術のリハビリ期間中とは思えない大谷翔平選手の活躍が連日のように報道され、バッターとしての成績が共通言語となっているところもまたすごいことである。
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