「心を読む能力」が人により異なるという衝撃事実 リーダーに不可欠なメンタライジング能力とは

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「心の理論」とは、ある特定の瞬間に誰が何を考えているかを推測する私たちの心の機能のことである。この高度なメタ認知能力――思考について考える能力――は、ヒトを他の動物と隔てる能力の1つだ。

自分の心の中身について考える能力は、1次の志向意識水準として知られる。別の人の心の中身について考える能力は、2次の志向意識水準(あるいは正式な心の理論)である。3人目の人が何を考えているかをあなたが正しく理解したならば、それは3次の志向意識水準となる。

成人では、次数の典型的な上限は5次である(図参照)。私たちは同時に5つの心まで(もちろん自分の心を含む)処理できる。

メンタライジング能力の上限を示したグラフ

ある時点で何人の心的状態を理解できるかは人によって異なる。このグラフに示した数値は、メンタライジング能力の上限が2次から8次の志向意識水準に収まる成人の割合を%で示す。おおかたの人は5次の志向意識水準(自分自身の心的状態と他の4人の心的状態)を十分に把握できる。なかには、2次か3次の志向意識水準しか持たない人もいる。同様に、約20%の人は5次を超える志向意識水準を持つ。Lewis, P. A., Rezaie, R., Browne, R., Roberts, N. & Dunbar, R. I. M., ‘Ventromedial prefrontal volume predicts understanding of others and social network size’, NeuroImage, 57, pp. 1624-1629, 2011; Lewis, P. A., Birch, A., Hall, A. & Dunbar, R. I. M., ‘Higher order intentionality tasks are cognitively more demanding’, Social, Cognitive and Affective Neuroscience, 12, pp. 1063-1071, 2017.

 

つまり、マーサが何かをするつもりであるとラジェンドラが考えているとカディシャが推測しているとピーターが望んでいると私たちは信じているのだ。

言葉や行動の裏にある意図を汲み取るこの能力は信頼の源泉である(あなたが何かをするつもりだと言うとき、私はあなたが本当のことを言っていると理解する――この文章自体が3次の志向意識水準だ)。

あまりに簡単な言明でありながら、それはすでに私たちのメンタライジング能力の半分以上を要求している。

メンタライジング能力は人によって異なる

私たちは成人するまでにメンタライジングに慣れてしまい、それを特別なものとは考えない。ところが、同時に対処できる相手の数は人によって大きく異なる(図参照)。

おおかたの成人は、3次の志向意識水準(自分以外の2人まで対処できる)と6次の志向意識水準(自分以外の5人まで対処できる)のあいだに収まる。

能力の違いは、会話の場面で何人に対応できるか、何人の親友を持つか、どれほど複雑な文章を使うか(少なくとも、1つの文章にいくつの節を組み入れ、意味の通る文章にできるかが指標になる)、小説の醍醐味をどれだけ味わえるか、どのくらい複雑なジョークを楽しめるかに直接の影響を及ぼす。

メンタライジング能力は、複雑な議論を理解し、込み入った設計プロセスや管理構造、セールス文句、その他の日常的な事柄について考える能力にも影響するだろう。

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