適切な準備をしておけば想定外の危機も対応できる--米大手PR会社ウェーバー・シャンドウィック ジャック・レスリー会長
東京電力福島第一原子力発電所の事故における政府や東京電力の対応は、国内外から批判を浴びた。想定を超える危機に直面したとき、政府や企業はどのような対応をすればいいのか。企業PRやコンサルティングを手掛けるウェーバー・シャンドウィック・ワールドワイドの会長であり、危機対応アドバイザーとして、米同時多発テロ発生後にアメリカン航空のサポートなどを行ってきた経験を持つジャック・レスリー会長(=写真=)に話を聞いた。
--福島原発事故における政府および東京電力の対応をどう分析されていますか。
あれだけ大きな危機であれば、どこの政府、企業であっても対応に苦慮する。それは人間が危機に対して起こす行動と同じ。たとえば車にはねられた場合、意識を失うことがあるが、これは体が脳などを守るために働く作用だ。
大変なトラウマを残すような出来事であればあるほど、組織自身も遮断しようとする作用が起こりがち。だが、実際には組織であればこそ、その作用と反対の方向に動かなければならない。
大きな地震は起こったが、東京の景色を見渡してもあまり損傷はない。それは耐震基準や規制が厳しく、準備がなされていた成果だ。同様のことをコミュニケーションでもやらないといけない。
--準備が不足している日本企業が多いと。
ほとんどの国で、これだけ大きな危機に対応できる準備は整っていないし、すべての企業で準備に対して今より改善できる余地はある。
ただ、日本特有の状況もある。それは単一民族という点だ。米国などと比べて微妙なコミュニケーションが行われ、明示的に何もかも言わなくても伝わっていき、そういったものを受け入れる感度を備えている。