適切な準備をしておけば想定外の危機も対応できる--米大手PR会社ウェーバー・シャンドウィック ジャック・レスリー会長

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 よくあるのは、過ちから発生する問題よりも、過ちに対するコミュニケーションに対して発生する問題のほうが大きいことだ。

もう1つは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の例。これは危機対応の模範になっている。J&Jが販売する解熱鎮痛剤のタイレノールに毒物が混入された。J&Jの中には必要な人だけに知らせて影響を最小限に抑えようという人たちもいたようだが、CEOはすぐに会見を開き、すべての商品の回収に動いた。膨大な費用はかかったが、事件を受けて異物混入されることがない新しいパッケージなども開発された。J&Jの社員に聞くと、この危機でかえって会社の評判は上がった、と言っている。

--過ちを認めると訴訟になって大変なのでは。

確かに米国は訴訟社会だ。法務部門や弁護士と(広報など)コミュニケーションを管轄する側がぶつかることはある。

それでも、より多くの企業が認識するようになっているのはコミュニケーション側と法務側が密な関係を持って進めていかなければならない、ということ。1つのチームで共通の目標に向かって考えていくと、両者のバランスを取った方策を見つけやすい。

--危機対応には、どういった人材が適任なのでしょうか。

私が顧客企業にしてきたアドバイスは、社内の人間の中で危機をいちばん嫌がる人を担当者にするべき、ということだ。彼らは危機が嫌いだからこそ早く危機を抜け出して過去のものにしたいと思う傾向がある。危機が好きな人はずっと危機の中にいたいと思ってしまう。

危機に対応するとき、よいリーダーシップに代わるものはない。意思決定して行動を起こせるレベルでのリーダーが必要であり、そこに権限を与えて任せることが重要だ。

Jack Leslie
 米ジョージタウン大学外交学部卒。米同時多発テロ後のアメリカン航空における緊急時対応のほか、コロンビア政府の麻薬密売やテロ対策などをサポートしてきた。米国の外交評議会のメンバーでもある。

(聞き手:中島順一郎、撮影:梅谷秀司 =東洋経済オンライン)

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