適切な準備をしておけば想定外の危機も対応できる--米大手PR会社ウェーバー・シャンドウィック ジャック・レスリー会長
それが、大震災や原発事故が起こったときに問題となった。日本国民だけでなく、コミュニケーションの違いを乗り越えて、世界にも発信していかなければならず、負担となった。
情報のコントロールを完全に行うのは無理
--では、どのように改善していけばいいのでしょうか。
航空会社がいい例だ。9月11日のアメリカ同時多発テロのときにも迅速な対応ができたが、それは事前のシミュレーションやトレーニングが数多く行われていたからだ。
適切な準備を整えておくこと。行動計画を策定して、基本的なところだけでも決めておく。たとえば誰がスポークスマンとなるのか、どれくらいの頻度でコミュニケーションを取るのか、どういう種類の情報を発信していくのか、どういうチャネルで発信していくのか、だけでも作成しておくことはできる。
一つひとつの可能性に全部対応するのは無理だが、基本的なロードマップを作って訓練しておけば、想定を超えた危機でも対応がしやすい。
ただし、今回のような危機への対応が、日本だけうまくいかなかったと考えて欲しくない。2005年にハリケーン・カトリーナが来たときの米国政府の対応はひどかった。
--同時多発テロやカトリーナの襲来以降、米国でのロードマップ作りは進みましたか。
大きな進捗があったといえる。(今年8月の)ハリケーン・アイリーンは約20年ぶりに人口密度が高い米国北東部、ニューヨークに被害をもたらしたが、連邦政府も州政府もカトリーナから学んだことが多く、迅速に準備を固めていた。
そのときの政府の方針は一にコミュニケーション、二にコミュニケーション、三にコミュニケーション。緊急事態にはコミュニケーションを取りすぎる、情報を発信しすぎることはないのだ、という考え方に基づいたものだった。政府や多くの企業は教訓から学び、備えるようになっている。