TV放送収入急減は小休止だが、楽観視はできない テレビ視聴者はいよいよネット世代に入れ替わる

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テレビ番組も、これまでと根本的に作り方の感覚を変えないと、蓮舫氏と同じようにネット世代から支持されなくなるのではないだろうか。

テレビ局にできること

放っておくと今後も個人視聴率はじわじわ下がるだろうが、コア視聴率はより下がっていく。これまでも若い世代を意識した番組作りはしてきただろうが、変化を加速すべきかもしれない。例えば番組の出演者が中高年に寄っているのであれば、世代交代を進めるべきだ。今人気と言われる芸人はほとんどが50代に突入している。「数字を持っている」のような固定観念から離れて、新しいタイプのエンターテイナーを探すべきだろう。

さらに、バラエティ番組は実はバラエティに富んでいないことも、そろそろ考え直すときではないか。芸人が出るバラエティがテレビ番組の中心になっていったのは、80年代から90年代にかけてだ。パラダイムシフトを起こさないとネット世代から支持されない。芸人がわちゃわちゃ騒ぐだけがテレビではないはずだ。

7月に放送されたフジテレビの「27時間テレビ」が好評でコア視聴率も高かったと聞く。「日本一たのしい学園祭」として一般の若者たちがスゴ技やダンスを競い合う企画が良かったのではないか。よく言われることだが、若い世代は決してテレビが嫌いではなく、アンケートを取ると好きな番組があるとの回答は多い。ただ、見たいものだけを選んで好きな時間に見たい。つけっぱなしにはしないのが、テレビ世代と違うだけかもしれない。自分に近い人たちがもっとテレビに出れば若い世代も見るのではないか。

都知事選で学ぶべきは番組の中身とは別に、積極的にネットで流すことの重要性だ。TVerですべての番組を見られるようにすべきだろう。また、ローカル局の一見地味な情報・報道番組も、TVerで目立たないのならローカル局が主体的に配信するチャンネルも持ったほうがいい。YouTubeでどんどん番組を配信してもいいし、自分の住む県の番組はここで見られる、というサービスの立ち上げにも挑むべきではないか。すべての若者がTVerに置けば見てくれるわけでもないからだ。またTVerはドラマとバラエティのイメージが強いので、違う場を作ったほうがいいのかもしれない。

キー局はもちろん、ローカル局も含めて、テレビ局にできることはまだまだある。テレビ局は自己資本比率が高く、財務的には実は余裕がある。失敗してもいいから挑戦を続けてほしいと思う。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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