子どものやる気に"着火"させる2つの方法 自分の中で「スパークする」何かと出会えるか

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ちなみに私事ですが、3世代(親子孫)6人で2年4カ月かけて、東海道五十三次を今年の5月に歩ききりました。なにげなく始めた家庭内のイベントでしたが、親も子も楽しみ、約500キロを歩く中で、多くの自然や史跡など、さまざまな勉強ができました。子どもと共通の話題で話ができますし、何よりも道中で出会った人々から受けた影響は計り知れないものがありました。親子での社会科見学で重要なことは、親も子も楽しくなることです。大人だけが楽しかったり、子どもだけが面白かったりというものであってはならないでしょう。

家庭内での「雰囲気作り」

次に2つ目の点火プラグです。それは「雰囲気」です。

医者の家庭では医者が育ち、学者の家庭では、学問に対する意識が高い子が育つ傾向があります。スポーツ選手の家庭ではスポーツの得意な子が育ち、芸能人の家庭では芸能人になる子が出てくることが少なくありません。いつも思考することが当たり前の家庭では、考えることが好きな子どもが育ち、アウトドアが好きな家庭では、自然に対する意識の高い子ができます。要するに、小さい時から“(自分も将来)そうなる”という雰囲気があるのです。

“そうなる”雰囲気の中で育てば、意識せずとも、自分は将来、この道に行くのだなと思い育っていきます。強制されたものではなく、無意識のうちに形成された場の中に浸かることで、いつしか「静かなスパーク」をしていくのです。無意識であるだけに、環境の力とは実にすさまじいものです。

子供を取り巻く環境を見直そう

これらを勉強の場に応用すると、「たとえ勉強をしたくなくても、勉強をすることが当たり前の場に入れば、勉強するようになる」ということです。ここで確認しなければならないことは、家庭内が本当にやるべき事がやれる雰囲気になっているのかどうかということ。

たとえば、親が「勉強しなさい」と言う一方で、親が毎日、長時間テレビを観ながらお菓子でも食べていたら、とても子どもは勉強する雰囲気にはなりませんね。また、勉強しようと思っても、手の届くところに、マンガやゲーム機が置いてあれば、意識拡散型の子はすぐに気が散り、そちらへ気持ちが流れてしまいます。

ハッとされた方、子どもを取り巻く環境や雰囲気を変える方法があります。たとえば、親が家で何かに一生懸命に取り組む場を作ることや、家族で部屋のレイアウトを変えたり、整理整頓をやったりして、雰囲気づくりをしていくという方法もあります(第8回目記事「『言っても聞かない子』を根本から変える方法」で、整理整頓が学力を伸ばすという記事も書いています)。

いずれにせよ、家庭内の雰囲気を“そうなる”という場に変えてしまうのです。そうすることで、強制せずとも「静かなスパーク」を引き出すことができるでしょう。

以上、2つの「点火プラグ」についてお話をしました。ご家庭の事情に合わせて、参考いただければ幸いです。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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