火星でコケが育てば人類は住めるようになるのか 研究者が語るテラフォーミングの意義と可能性

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堀口 コケは紫外線や放射線への耐性が強いのですね。

藤田 宇宙空間での曝露で全く死ななかったわけではなく8割ぐらい生き残り、2割が死にました。半年で2割減ったのですから、10年たつとほぼ全滅になるのではないかといった予測ができるようになります。火星や月だけではなく、小惑星に持っていった場合の生存の可能性も予測できます。 学生がレポートに「限界を知る実験は重要です」と書いてくれました。その通りです。タイプCをカットした場合はほとんど死なない。タイプCでダメージを受けることが死ぬことにつながる。真空で温度変化も激しい。その厳しい条件でも生き残ることがわかっています。死んだ原因を探るため、ゲノム配列を決めて本当にDNAがやられているかを調べる。生き残ったコケも地球上では起こらないゲノム変異が起こっている可能性があるわけです。

紫外線による突然変異はよく起こるのですが、地球上では起こらない突然変異が必ずしも悪いものではなく、新しいタイプの変異ならば新しい変化を生み出す可能性がある。うまく考えるといい面もあるかもしれません。そうしたデータを取り、限界や新たに起こっていることを探したい。地球上ではできないので、ISS環境は重要だと思います。

再現性を確かめることが科学的なデータとしては大切

堀口 コケは8割生きていたということですか。

藤田 はい、ただし生きていただけであって、育ってはいないのですよ。また8割というのもまだ1回だけの実験で、これからも実験を繰り返し、再現性を確かめることが科学的なデータとしてはとても大切なことです。胞子の曝露実験は、スイカの種を宇宙空間に曝露して、地球に持って帰ったら発芽しましたというのと一緒です。ロシアを中心としたグループが種を持って行って、死なないというデータを出しています。

堀口 種はすごいですね。

藤田 そうですね。なぜ種がすごいのか、胞子がすごいのかがわかれば、どうやったら育ってO2をつくってくれるのかというところに結び付かないかなと考えています。種がすごいのは皆知っています。それを具体的にどう生かすかです。

堀口 真吾 DigitalBlast 代表取締役CEO

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ほりぐち しんご

野村総合研究所、日本総合研究所等にて、主にデジタルテクノロジーを活用した新規事業開発、マーケティング戦略の立案・実行、デジタル戦略立案・実行に従事。特に金融、ハイテク・通信、宇宙を専門とする。

2018 年にISS 等での使用を想定した小型ライフサイエンス実験装置の研究開発を行うDigitalBlast を創業。現在、企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)や宇宙ビジネスコンサルティングを行うDigitalBlast Consultingの代表も務め、宇宙利用の拡大を目指している。

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藤田 知道 北海道大学大学院理学研究院教授

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ふじた ともみち

1988年早稲田大学教育学部理学科生物学専修卒業、1990年東京大学理学系研究科相関理化学専攻(修士課程)修了、1993年東京大学理学系研究科相関理化学専攻(博士課程)修了。 国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)、米パデュー大学、京都大学、基礎生物学研究所等を経て、2016年より現職。植物学の研究を進める中で宇宙における植物の生育も研究。特に強いストレス耐性を持つコケ植物を活用した地球や他惑星の緑化を目指した研究を進めている。

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