ですから3.11のとき、このような仮定は不謹慎かもしれませんが、もしも私が自主避難地域に住んでいたとしたら、私も同じように避難した組だったと思います。石垣島に一人息子さんと移住した俵万智さんを、非難する声もあったそうですが、彼女は「子を連れて 西へ西へと逃げていく 愚かな母と言うならば言え」と詠みました。
公害病もそうですが、何十年後には発病するかもわからない不安をもって子どもを育てるよりは、気になる人が避難生活を続けるのは、大袈裟でもなんでもないと考えます。私も「笑わば笑え、言うならば言え」という心境になったと思います。福田様の「誰が何と言おうと、子どもの安全が最優先」というお気持ちは、とてもよく理解できます。
放射能や癌への恐れは人によって違う
お気持ちは十分理解はできますが、本件は離婚か否かという「1か0の問題」ではなく、その中間の選択肢がいくつかあると思います。
まず夫君の気持も理解すべきです。今までは何だかんだと言われても、避難生活に協力してくださったのですね。妻子と別れて福島で暮らし働いている彼にとっても、大変な時期でした。職業の関係で彼が福島を離れることはできず、その彼が、妻子であるあなた方と、早く一緒に暮らしたいと思っておられるのです。今戻って来ないなら離婚すると言われたのも、一種の愛情表現と取れなくもありません。
また、家族全員で住む選択肢も可能な状況かもしれません。あの震災では津波被害で、いまだに遺体とさえ対面できない方々がおられます。それに比べればといえば語弊がありますが、あなたの家庭問題は、考えようによってはまだまだ不幸中の幸いの部類です。来年はお嬢様が小学校へ入られる年代ですね。福島は、危険区域が解除された地域もあるように、産業も人々の生活も、復興が進んでいるところは進んでいるそうです。甲状腺ガンなどの子どもさんの健康チェックを怠らず、家族全員の生活を選ぶのもひとつの選択です。
別の選択肢としては、住宅費はあなたが稼ぎ、あと数年でも、今の避難生活を続けたいと、話し合いで提案してみるか、山村留学のようなシステムで、子どもさんだけを残し、あなただけ帰るなど、いろいろ合った方法を、探ってみてはいかがですか。
そして根本的には、ご夫婦で、健康に対する根源的な問題から丁寧に話し合われることが大切だと思います。人によってガンや放射能への恐怖は大きく異なり、それがさまざまな誤解や意見対立を生んでいるように思います。
昔、乳ガンで乳房切除しか助かる方法はないと言われた女優さんが、「乳房は女優の命」と、その切除を拒否しました。命より大切な乳房があるのかと、私は仰天しましたが、実際、その女優さんは命を落としました。その後も、ガンに対するおそれが私ほどない人は、世にいっぱいいることを知りました。
福田様ご夫婦も、安全だと言われている地域での目に見えない放射能が、将来子どもに及ぼす影響について、おそれや考え方が、そもそも違うのだと思います。そこを埋める率直で真摯な対話が、福田さまのご家族にとってもまた、原発をめぐる社会的な対立に関しても重要なのだと思います。
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