日本の携帯電話とスマートフォンとの違いは、垂直統合と水平分業の違いだと前回述べた。この点を敷衍(ふえん)しよう。
日本では、携帯電話の利用者が回線を自由に選ぶことはできない。つまり、機器と回線の結びつきは固定的であり、回線提供者(通信事業者)を頂点とする垂直統合の構造が形成されている。また、利用できるアプリケーションは、回線提供者が決めている。その意味でクローズドなシステムだ。
ところが、スマートフォンはこの状態を打ち破る潜在力を持っている。利用者はきわめて多数のアプリから、自分に必要なものを選んでダウンロードできる。アンドロイドOSの場合には、OSと機器の結びつきも自由になっている。
さらに海外では、SIMロックがないか、あっても緩やかだ。また、同一の機器に複数の回線提供者がいる(アメリカでは、AT&TとベライゾンがiPhoneの回線を提供している)。また、一般にスマートフォンでは、携帯電話用の3G回線だけでなく、Wi‐Fiでも接続できる。Wi‐Fiは標準化されているので、どんな回線を選んでもよい。3G回線は混雑化しつつあるので、今後はWi‐Fiが主流になる可能性もある。
このようにスマートフォンは、もともと水平分業的性格を持っている。ところが日本の場合は、SIMロックによって、特定の3G回線でしか利用ができない。KDDI(au)がiPhoneを取り扱う予定であるなど変化も起きているが、SIMロックは依然として残る。
日本のスマートフォンがどのような方向に向かうのか、現時点では、まだわからないことが多い。ただ、仮に垂直統合モデルが崩れれば、PCと同じことが生じる可能性が強い。国内市場で日本メーカーの存在感は希薄になる。
他方で、垂直統合が続く可能性もある。その場合には、携帯電話と同じように、さまざまな機能を盛り込んだ高価な機械が登場するだろう。スマートフォンもガラパゴス化するわけだ。そうなれば国産メーカーは生き残る。「国産メーカーが生き残るには、ガラパゴス化するしかない」とも言える。