(第18回)ガラパゴス化か、さもなくば敗退か

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日本国内のマーケットを、何らかの方法で海外から遮断することができれば、日本メーカーは安泰だ。「何らかの方法」とは、PCの場合には日本語処理であったし、携帯の場合には通信キャリアと機器の自由な組み合わせの禁止だ。

PCの場合、それが破れて外国製品が流入すると、日本メーカーは太刀打ちできなかった。スマートフォンでSIMロックが外れれば、日本のメーカーは直接に海外製品との競争にさらされる。そして、スマートフォンが携帯電話を駆逐してゆくことによって、携帯の生産でも生き残れないだろう。

ところで、スマートフォンの場合、第17回で述べたように、競争はOSというソフトウエアをめぐって行われている。PCの場合も、競争の中心はソフトウエアであった。OS戦争があったし、ブラウザでの大戦争があった。そして検索の競争があった。

なぜ競争はハードウエアでなく、ソフトウエアで行われるのだろうか? 基本的な理由は、ハードウエアの生産はルーチンワークであるため、新興国で行えることだ。そして新興国の賃金は安い。だから生産で新興国に勝つことはできない。

コンパックが低価格製品を販売できたのも、台湾メーカーに生産を委託したからである(そもそもコンパックが低価格路線に転じたのは、アメリカのPC市場で台湾メーカーが急速に台頭してきたからである)。

その後、IBM、デル、HP、さらには日本やヨーロッパのPCメーカーも、台湾の工場をOEM工場として使うようになった。こうして、台湾は、「世界のパソコン工場」と呼ばれるようになったのである。

ハードウエアの生産は新興国に移り、付加価値の高い部分がアメリカに残った。それは、一つにはOSだ。また、MPU(超小型演算処理装置)もアメリカに残ったが、これもソフトウエアの比重が高い製品だった。


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2011年10月15日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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