携帯電話と初期のPCは、「囲い込みとすみ分け」の体制であったことを述べてきた。
これは、「利用者・顧客を囲い込んで、市場を分割する。供給者はすみ分ける」というシステムだ。これを、「囲い込みとすみ分けの経済体制」と呼ぶことにしよう。
わかりやすくいえば、いくつかの縦割りグループが併存する「蛸壺経済」である。これらの蛸壺は分業しているのではない。ある事業分野では、複数の蛸壺が同じ事業を行っている。
これは、携帯電話以外の分野においても、日本経済で広く見られる現象だ。第2次世界大戦後の日本経済の基本的な構造は、こうしたものであるということができる。
電力においては全国を9地域(沖縄を入れると10地域)に分割し、その中で電力会社が発送電を独占的に行う地域独占体制がとられている。この状況は、アメリカと比べると著しい違いだ。アメリカの電力事業者の状況は、表に示すとおりである。民間企業だけでも200の事業主体がある。地方公営の事業者数は、実に2000を超える(戦前の日本は今のアメリカと似た状況だった。戦時中に電力国有化が企図され、発電と送電を一手に行う「日本発送電」が設立されたのである)。