イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏
「OpenAIを自分の会社にする」という最初の提案を却下されたマスクは、次に元々自分の会社であるテスラとOpenAIを合併させることを提案してきた。
OpenAI首脳陣がこの合併案を拒絶すると、マスクはOpenAIを離脱することを決意した。
「のろま!」と言い捨てて退場
2018年2月のある日、マスクはアルトマンに付き添われてサンフランシスコにあるOpenAI本社の最上階を訪れ、その従業員らにお別れの挨拶をした。
それは儀礼的で穏やかな式典になるはずだった――マスクは自分がOpenAIを去ることを告げた上で、従業員達のこれまでの努力を讃える。一方、アルトマンもマスクがこれまでしてくれたことに謝意を示し「イーロンがOpenAIを離れるのは、テスラの仕事に集中するためだ」と述べる――そういう手はず、あるいは暗黙の了解だった。
しかし、実際にはそうスムーズに事は運ばなかった。その場にいた人達の証言によれば、マスクは別れの挨拶の途中で「自分はここ(OpenAI)を去るが、ここでやっていたようなAIの開発はテスラで続けて行う。君たちはもっと速く動く(もっと早く成果を出す)必要がある」と述べたとされる。
これにOpenAIの従業員らはムカッときた。そのうちの一人であるインターン研究員がマスクに向かって「急げ、急げと言うけど、あなたの計画は無謀ですよ」と反論した。この研究員に対し、マスクは「のろま(jackass)!」と言い捨てて、その場を立ち去った。
後日、OpenAI経営陣の一人が「のろまトロフィー」なるものをわざわざ業者に発注して作らせ、このインターン研究員に贈ったという。「あまり気にするな」という慰めと同時に「よくぞ言ってくれた」という感謝も込められているのかもしれない。
マスクと袂を分かったアルトマンは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOに近づき、マイクロソフトの巨額融資を引き出して、ChatGPTの開発に邁進していくことになる。
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