イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏

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中国を起源に2500年以上もの歴史を有し、伝統的ボードゲームの王者と見られた囲碁がAIによって制覇されたことは、大きな衝撃をもって受け止められた。人間の様々な知的活動がいずれコンピュータのようなマシンによって代替される予兆とも見られた。このニュースはメディアで大々的に報じられ、世界的なセンセーションを巻き起こした。

AI脅威論者となったイーロン・マスクとグーグルの因縁

時間は前後するがディープマインドの設立から2年後となる2012年、ハサビスはシリコンバレーのつてを頼って大富豪マスクと面会するチャンスを得た。スペースXの工場を訪れたハサビスは、組み立てラインが見渡せるカフェテリアでマスクと昼食を共にしながら、自分たちの会社を売り込んだ。つまりディープマインドへの投資を求めたのである。

このワーキング・ランチで、マスクは「(スペースXが)火星に打ち上げるロケットを開発するのは、地球の人口増加や世界戦争、小惑星との衝突などの危機に備えるためだ。いざとなれば人類を火星に移住させるのさ」と壮大な計画を語った。

これに対しハサビスは「それもいいでしょう。でも、(AGIのような)スーパー・インテリジェンスが人類を滅ぼす危険性も忘れてはいけませんよ」と述べた。

これを聞いたマスクは一瞬息を吞んだ。そんな可能性もあるのか、と驚いたのであろう。ハサビスの警告に衝撃を受けたマスクはディープマインドへの投資を約束すると共に、これ以降「AI脅威論」の提唱者として知られるようになる。

このワーキング・ランチから数週間後、グーグル共同創業者・CEOのラリー・ペイジと会ったマスクはディープマインドについて彼に紹介した後で、(恐らくハサビスの受け売りで)いつの日か登場するであろう超越的な人工知能、つまりAGIが人類を滅ぼす可能性に言及するが、ペイジはその話に乗ってこなかった。

ペイジは「超越的なAIやそれを搭載したロボットがいつの日か人類にとって代わる存在になったとしても、それは(人間のような生物からAIロボットなど人工物へと)進化が次の段階に移行するに過ぎない」と考えていたのだ。

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