イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏

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当時のアルトマンは人生で初めて起業したループトを売却して間もない駆け出しの起業家だったが、彼より一回り以上年上のマスクは既にテスラとスペースXのビジネスを軌道に乗せた規格外の経営者だった。人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。

このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。

マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した。

AI開発で先頭を走っていたグーグル

2014年に英国の気鋭スタートアップ「ディープマインド」を買収するなど、当時AI開発で先頭を走っていたのはグーグルだった。

ディープマインドは優れたAI研究者で神経科学者、またチェスの名手でもあるデミス・ハサビスらによって、2010年にロンドンに共同設立された。2014年、グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。

ハサビスらの開発チームは、ゲームAIの研究で培った「ディープラーニング」や「強化学習」などの先端技術を囲碁に応用して「アルファ碁(AlphaGo)」と呼ばれるAIを開発した。

アルファ碁は2016年3月、それまで世界タイトルを通算18回も獲得したトップ棋士、韓国のイ・セドルを4勝1敗で下した。当時、囲碁の世界チャンピオンを(アルファ碁のような)AIが打破するのは少なくともあと10年はかかると見られていたのに、あっさり勝ってしまったのである。

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