イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏

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グーグルへの対抗勢力として、(マシンよりも人類を優先する)新たなAI研究機関がどうしても必要だとマスクは力説したが、「今から始めても果たしてグーグルに追いつくことができるだろうか」という疑問の声も上がった。

しかし最終的には「やってやれないことはないだろう」という結論に彼らは至った。

こうしてグーグルに対抗するという含みを持たせつつ「人類全体に寄与する安全なAGIを実現する」という基本構想で彼らは合意に達した。

マスクとアルトマンのプロジェクトは「非営利の研究団体」となる事が決まり、マスクがこれを「OpenAI」と命名した。この研究所で開発したAI技術やソースコード(コンピュータ・プログラム)を特許で囲い込むことをせず、むしろ論文発表などを通じて技術をオープン化して人類全体に貢献するという趣旨だった。

世界有数の大富豪マスクは、OpenAIプロジェクトに気前よく1億ドル(当時の為替レートで120億円)を出すと約束した。

開発の遅れに苛立つマスク

OpenAIは2015年末の設立からしばらくは研究活動が迷走し、実質的な成果が出せなかった。それは事実だが、客観的に見れば設立から僅か1、2年程度で目立った成果を出せというのは無理がある。しかしマスクはそうは思わなかった。

彼は技術開発陣に面と向かって「もっと早く、もっと成果を出せ」と迫った。

「もうそろそろ大きなブレークスルーを達成しないと、シリコンバレーの笑い草になるぞ」と急き立てた。そして2017年には、(必ずしもマスクが決めたとは限らないが)元々数十人程度と少ないOpenAIの研究者の一部が早くも解雇されている。

OpenAIの開発陣に辛く当たるマスクの脳裏には、ペイジつまりグーグルに奪われた英国のスタートアップ企業「ディープマインド」の存在があった。「片や(グーグルの)ディープマインドはあれほど華々しい成果を出して世界的な脚光を浴びているのに、お前たちは一体何をやっているんだ?」とばかりにOpenAIの開発陣を責め立てたのだ。

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