イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏

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OpenAIの大きな問題は資金不足だった。マスクはOpenAIの設立に先立って1億ドル(120億円)の資金提供を確約したが、実際にはまとめてその額を拠出したわけではない。むしろ年に2000万ドル(20億円以上)程度のペースで段階的に提供していったと見られる。

もちろんピーター・ティールをはじめ他の投資家からも、同程度の資金が提供されたようだ。

それらを全部足すと恐らく年間数千万ドル(数十億円)と見られるが、この程度の予算ではOpenAIが掲げる「AGI」という壮大な目標を達成するには全然足りなかった。

OpenAIの公式ブログによれば、2017年初旬の段階で彼らは「AGIを実現するには莫大な計算機資源が必要とされ、それを確保するためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要だ」と認識した。これほど巨額の資金を、OpenAIのような非営利団体として調達するのは極めて難しい、という結論に達したという。

マスクがOpenAIとテスラの合併を提案

2017年の末頃、マスクやアルトマンら首脳陣はOpenAIを事実上、営利企業化することで合意に近づいた。この際、マスクは自身が(営利企業化した)OpenAI株式の過半数と取締役会の指揮権を握って、そのCEO(最高経営責任者)になることを要求した。有り体に言えば、「OpenAIを自分の会社にしたい」ということだ。

しかしアルトマンやブロックマンがこれに難色を示すと、マスクはOpenAIへの資金供給をストップしてしまった。

最大のスポンサーであるマスクに資金供給を止められて、OpenAIはその研究者をはじめ従業員に毎月の給料を払うこともできなくなった。困ったアルトマンがリード・ホフマンに相談すると、彼は当面のつなぎ資金を提供してくれた(ホフマンはLinkedInを創業したことなどで有名な起業家・投資家で、OpenAIの初期の取締役の一人でもある)。

ただしマスクと(残された)OpenAI首脳陣との交渉はその後も続いた。

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