イーロンマスクが実績ゼロから宇宙を目指せた訳 民間企業が宇宙ビジネスをリードできるアメリカ
スターリンクは衛星が高度約550㎞の地球低軌道を周回しています。これにより、電波塔などの設備や通信回線施設が不要で、かつ通信速度も速くなります。ネット回線と既存の衛星通信が抱えていた課題を一挙に解決できる通信方法なのです。
スターリンクは世界各国で利用されており、日本ではKDDIがスターリンクと提携して、2022年10月からサービスを開始しました。2023年には、ソフトバンク、NTTドコモなども同様のサービスを始めました。
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、光ケーブルなどの設備の損傷や基地局の停電により、大規模な通信障害が発生しました。道路が寸断され、設備の早期回復は困難な状況にありました。そこで活躍したのがスターリンクです。KDDIとソフトバンクがスターリンクの受信アンテナを各地の避難所などに無償提供しました。周辺にいる被災者は、スマートフォンなどでネット通信できるようになりました。
SpaceXは2020年代半ばまでに総数約1万2000機の衛星を高度550㎞の軌道のほか、高度1150㎞、高度340㎞の軌道に配備する計画です。スターリンクは通信分野で革命を起こしつつあるのです。
Amazon創業者、宇宙へ行く
マスク氏と並ぶ起業家であるジェフ・ベゾス氏も宇宙分野のキーパーソンの一人です。米国オンライン通販大手「アマゾン」創設者で、ワシントンポスト紙を買収して経営を黒字化させたことでも知られるベゾス氏は2000年、有人宇宙飛行事業を目的とする民間企業Blue Origin社(ブルーオリジン)を設立しました。アマゾンがまだ黒字化していない時点での起業でした。
ベゾス氏はロケット研究者だった祖父や、SFテレビドラマ『スタートレック』の影響で、科学や宇宙への強い関心を抱き、物理学者を目指していたといいます。Blue Originは商業的な宇宙旅行の実現を目指し、再利用可能なロケット技術の開発や有人宇宙船の開発に取り組んでいます。
弾道飛行用の打ち上げシステムである「ニューシェパード」は、乗客6人を乗せる乗員カプセルと、それを打ち上げるロケット動力推進モジュールから構成されています。乗員カプセルがロケットの先端に搭載された状態で発射され、飛行中に分離されます。乗員カプセルは飛行を続けた後にパラシュートで降下して軟着陸します。
2021年7月20日には、ベゾス氏を含む乗客4人を乗せたニューシェパードが10分あまりの飛行で高度107㎞の宇宙に到達し、世界初の宇宙旅行に成功しました。Blue Originは月着陸船「ブルームーン」の開発も進めています。
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