映画監督上田慎一郎が語るクリエーティブの未来 「"意味不明な行動"なら人間はAIに負けない」
ーー拝見しましたが、温かい気持ちになる作品でした。
『みらいの婚活』はKDDI株式会社のブランディング作品として作成したのですが、「この物語が未来を変えられるといいな」という思いを込めているんです。
例えばスタンリー・キューブリック監督作品の『2001年宇宙の旅』は1968年にアメリカで公開された映画ですが、そこに出てくるタブレット端末の存在は、まさに現実のものになっています。
映画を見た人が「こんなものがあったらいいな」と思って、本当にそれを作ってしまうような。今はまだ虚構だったとしても、そうやって現実を引き寄せる力が物語にはあるに違いないって僕は信じているんですよ。
ーー確かに作品を見ていて、こんな技術が生まれる未来はきっと来るだろうな、と思いました。
5年後10年後に確実にくるだろうという想定をもとに書いたので、そう感じてもらえたのかもしれません。
僕は普段から「半歩先の未来を描く」ということを心掛けているんですよ。
ーー「一歩先」ではないんですね。
「一歩先」だとちょっと遠くて、見る人が自分と地続きの物語だと感じられなくなってしまうんです。
未来に影響を与えるためにも、想像もつかないような未来を描くのではなく、本当にありそうだなと思える身近な作品を作ることを大切にしています。
テクノロジーの進歩は、クリエーターにとってプラス
ーーここ数年の生成AIの進歩は目を見張るものがある一方で、クリエーターの仕事にあらゆる影響を及ぼすとも言われています。上田監督はAIの進歩についてどのようにお考えですか?
僕としてはポジティブに捉えています。歴史を振り返ると、技術の進化にはプラス面だけでなくマイナス面が伴うのがスタンダード。ですが、結果的にプラスになることが多いと思うんです。
古くは産業革命の時代にも「人の仕事がなくなるのでは」と言われていましたが、ただ単に失われるのではなく、機械の発展に伴って新しい仕事が生まれましたよね。だから最近のテクノロジーの進歩も、大いにプラスの面があるはずです。
例えば業務を効率化したり、人間をもっとクリエーティブにしたりすることが、AIにはできると思います。