18、19歳成人でも喫煙・飲酒禁止はなぜ正しいのか 「成人なら喫煙や飲酒も自己責任」に危うさ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ある人の行為が他者(社会)に悪影響を与える場合には政府の規制は正当化されるが、他者への影響がない場合は個人の自由で政府が介入すべきではないという立場はパターナリズムを批判する立場となる。

たとえば自動車のシートベルト着装義務も、スピード違反や飲酒運転と違ってパターナリズムだという指摘があるが、違反行為とされている。

法的能力と身体への影響を分けて考える

タバコや飲酒については成長期の子どもや若者の身体形成に悪影響を及ぼし得ることが指摘されている。法律行為の能力を観点に規定されている民法の成人年齢が2歳引き下げられたからと言って、連動させるべきではないと筆者は考える。

また、今回の宮田選手の行動が他者への影響を及ぼしうることも指摘したい。報道によれば喫煙は都内のプライベートな場所、飲酒はトレーニングセンターの宿泊棟とされているが、宮田選手は女子体操代表5名の主将だった。

他の4名は全員10代で、19歳1人、18歳1人、未成年の16歳2人だ。また体操協会の行動規範には「日本代表チームとしての活動の場所」では20歳以上でも飲酒禁止、喫煙も原則禁止となっている。主将が合宿所で違法・規律違反行為をすれば他の選手への影響も懸念される。

国の代表として選ばれた女子体操の5名の主将を務め、未成年者とともに合宿活動をしていたなかでの違法、行動規範違反行為は、宮田選手が判断能力を有するとされる「成人」であることからも批判されるべきものである。残念で不幸なことであるが、代表辞退は致し方ないというのが筆者の見解だ。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事