訪日客は電車に乗るのに、乗車券なりICカードなりを買わねばならない。冒頭のパブで出会ったシティの証券マン氏のような「旅慣れた欧米人ビジネスマン」は疑いもせず、まっすぐ駅の自動販売機に向かったのだが、ここで大問題が発生した。
なんと、日本では「クレジットカードで普通の乗車券が買えない」のだ。
日本も一角を成す「G7」の他の6カ国にある主要国際空港で「現金でないと切符が買えない駅」なんてどこにもない。証券マン氏は、「世界有数のテクノロジー王国であるニッポン。なのに、現金がないと切符が買えないなんて想像もできなかった」と述懐する。ところが彼にはさらなる困難が待ち受けていた。
駅の自動販売機までたどり着いたのに、今度は現金を手にするためにあちこち走らねばならない。件の証券マン氏が探すのは、ATM。なぜなら、日頃の持ち合わせ現金はせいぜい20ポンド(4000円弱)、まして外国に行くのに邪魔な自国通貨など持っているはずはないのだ。
ATMからも現金が出ない!
日本で暮らしている分には国内ATMがどう運用されているかなど知る必要はないだろうが、外国発行のクレジットカードで現金が引き出せるマシンは驚くほど少ない。ちなみにメガバンクにある機械はほぼ使えず、郵便局かセブン銀行など一部の端末に限られている。そんな「細かいこと」を初訪日の外国人に「勉強してから来い」というのは無理な話だ。
「普段の仕事で慣れ親しんでいる名前の大手銀行の機械にカードを入れてもエラーになる。これはいったいどういうことかと……」 もうこれはお手上げと、手持ち現金の在り処を思い出して、両替所に急いだという。
「ヨレヨレのポンド札がピカピカの千円札に両替された時の喜びといったらもうなんと表現したら………」と楽しそうに話すのだが、ここはさすが英国人、辛口な評価を付け加えることを忘れない。
彼は「滞日中に、おもてなし、という言葉のことを誇らしげに語る日本人に会った」とした上で、こうつぶやいた。「日本人はピカピカのお札を両替して渡すようなことを、おもてなし、って思っているみたいだけど、本質的な事はまるで分かっていない」
お金が手にできないのは誰にとっても死活問題だ。日本がこの分野で「世界標準」に近づくのはいつのことなのだろうか。ATMについては、いずれ 「海外発行カードでの引き出し対応」が大幅に広がる見込みだが、普通乗車券のクレジットカードによる購入のシステムが導入される見通しは今ひとつはっきりしない。欧米先進国では、空港〜市内間の鉄道切符さえもネット上でEチケットが発券できるのが標準的な中、果たしていつまで「日本独特の規制」をかけ続けるのか。ガイジンさんたちの期待に沿ったシステムの誕生を心待ちにしたい。
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