プロから見て「日本の空港」は何がダメなのか 「おもてなし大国」なんて完全な幻想だ

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ロンドンをベースに活動する筆者が100カ国以上を回った経験で、これまでに最も簡単に公共交通で空港から脱出できた例を紹介してみよう。

想像を絶する対応策!

場所は、国際機関が集まるスイスのジュネーブ。欧州のおへそに位置するこの街だが、通貨はスイスフランが流通しており、欧州単一通貨・ユーロは使えない。到着客に両替を強いて云々、となるのかと思ったら「想像を絶するすばらしい対応策」が用意されている。

ジュネーブ空港では到着客向けに無料交通チケットを配布している

それは、「到着客に無料で市内公共交通のチケットを配る」というもの。

税関内には専用の発券機が置かれており、到着客は自由に何枚でも取れる。これなら旅行客が現金を工面したり、路線図とにらめっこして切符を買うのに悩んだりといった面倒は全て解消する。ただし「発券後80分以内に目的地に到着すること」という縛りを設け、悪用防止対策もきちんと打っている。

ちなみに同市(はもとより、スイス全体の)にあるほとんどの宿泊機関では、滞在中日数分の市内交通乗り放題切符を無料で配布している。観光立国かつ環境問題に厳しいスイス独特の施策ではあるが、「世界の国にはこんな実例もある」と捉えてみてほしい。

空港の税関を出て、電車に乗るまでのプロセスを順に追って整理してみよう。

前述のジュネーブのケースでは、「無料券を取る」「駅に行く」「列車の行き先を確認する」「乗る」で終わりだ。

専用の発券機。使い方は1番のボタンを押すだけ

普通の日本人が羽田から都心に出る時は、せいぜい「交通系ICカードで改札通過」「行き先を確認」「乗る」でプロセスは終わる。ジュネーブのケースとお金を払う払わないの違いこそあれ、手間自体はそんなに変わらない。全国でほぼ共通化されたICカードの恩恵を謳歌して喜ぶ人もいるだろう。

ところが、である。

このプロセスを「日本に着いたばかりの外国人のケース」で列挙すると、改札に入るまでにいくつかのハードルが待っている。

まず、「改札通過」までに2つのプロセスがある。日本円現金の準備と切符の購入だ。簡単そうに見えるが決してそうではない。

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