「社員が訴えられた」とき会社はどうするべきか 「懲戒権の行使」がトラブルを招くこともある

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その場合、会社は当該行為について、社員が業務の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(民法715条1項)こととなります。いわゆる「使用者責任」です。これは、直接に損害を被った者(被害者)への損害賠償責任であり、私法上の責任です。

そのほかにも社員の違法・不正行為のなかには、たとえば、一定の労働災害や事故について労働基準監督署長への報告義務(労働安全衛生規則96条、97条)を怠るといったように、直接には被害者が生じないものもあります。

このような報告義務違反の場合、被害者への損害賠償義務は生じませんが、会社に対して罰金刑が科されることがあり(労働安全衛生法120条、122条)、いわば公法上の責任を会社は負うことになります。なお、こうした事案でも、会社が労災にあった労働者に対して、「安全配慮義務違反(労働契約法5条)」による損害賠償義務を負うことはありますが、これは、上記の報告義務を履行していても生じる責任です。

以上は、社員の違法・不正行為に関する会社の法的責任の例ですが、会社は、法的責任のほかにも、社会的責任や事実上の責任を負うことも少なくありません。従前より、メディアにより会社の不祥事が報道されるリスクはありました。昨今のネットによる情報発信の隆盛により、社員の違法行為・不正行為に関しては、あることないことない交ぜな内容で社会に広く発信されるリスクが拡大しています。

会社としてはこうしたレピュテーションリスク(ネガティブな評価が広まり、信用やブランド価値が低下するリスク)も看過し得ないところとなっています。

「セクハラ」「パワハラ」は身内が被害の対象

(2)対内責任

社員の違法・不正行為に際しては、会社のほかの社員(構成員)が被害を被ることがあります。例としては、会社内(職場内)のセクハラ、パワハラ、暴行といったものが挙げられます。

このような場合、被害にあった会社のほかの社員(構成員)も、会社と加害者たる社員にとっては第三者という理解となり、会社は被害者に対して、使用者責任(民法715条1項)を負うこととなります。

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