「社員が訴えられた」とき会社はどうするべきか 「懲戒権の行使」がトラブルを招くこともある
違法・不正行為を行なった社員に対して、会社が懲戒処分を下すことは少なくありませんが、当該懲戒処分が法的に争われるケースも多々見られます。
人事上の懲戒処分については、その処分が法的に有効とされるためには、
が要件と解されます。
殊に、社員の違法・不正行為に関連して実務上問題となることが多いのが②です。
すなわち、社員の違法・不正行為に関しては、それが業務に関連して為されたもの、たとえば職場内での窃盗、ハラスメント等であれば、会社の秩序違背の程度が明瞭であり、会社としても、その秩序違背の程度を勘案して懲戒処分の程度を判断することは比較的容易です。
しかし、違法・不正行為は業務外で為されることも少なくありません。たとえば通勤電車内での痴漢行為、私的活動での飲酒運転等が挙げられるでしょう。
このような、いわば私行での非違行為に関しては、会社の事業活動に直接関連を有するものおよび会社の社会的評価の毀損をもたらすもののみが懲戒の対象となり得るに過ぎないため、懲戒権の発動について厳しくチェックされることとなります。
「私行における非違行為」に対する裁判例
最近の裁判例でいえば、児童ポルノの公然陳列罪で罰金刑に処せられたことを理由とする懲戒解雇について、一審(大津地裁平25・3・5判決)では解雇無効、二審(大阪高裁平25・9・24判決)では逆転で解雇有効とされた事案があります。
この事案の特性(さらには二審で解雇有効とされた要因)としては、この犯罪の報道では会社名は明かされていなかったものの、
等が挙げられます。
逆にいえば、これらの点の評価が重くなければ、解雇につき一審の如く消極的な判断が為されることもあり得るところです。