【産業天気図・11年10月~12年9月】震災からは立ち直るも、世界景気悪化の暗雲が

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 未曾有の震災被害から立ち直りつつある日本の産業界に、世界景気の暗雲が垂れ込めている--『会社四季報』担当記者の業界景況感予想はそう総括できそうだ。

 今回の予想で対象となった34業種のうち、秋以降に「晴れ」(主要各社が前年同期比で増益)になると見込まれているのは11業種。電子部品など東日本大震災の影響でサプライチェーンが大きく乱れた業種も含まれ、産業界の回復力を見せつけている。

 だが「晴れ」業種の数は来春以降も11業種で変わらず。回復の勢いが続かないのは、欧米の不透明な景況感と円高という懸念要素があるからだ。

 2011年10月~12年3月の前半と、12年4月~9月の後半とを比較した場合、前半より後半の景況感が上向くと見込まれているのは8業種。たとえば建設機械は、足元は最大市場の中国の金融引き締めが痛手だが、後半になれば中国の建設投資活発化と日本の震災復興需要が見込めるというシナリオだ。このほか、建設や情報通信といった内需型の産業でも景況感の上向きが予想されている。

 だがこの上向きのムードは全産業には広がらない。たとえば自動車は、秋からの前半は震災影響からの反動による増産効果が高く「晴れ」の活況だ。だが足元1ドル=70円台の円高基調が続けば、来春以降の後半は収益が押し下げられる懸念が大きい。欧米を中心とする世界景気の減退で、新車販売そのものが伸び悩むおそれも否定できないという。

 内需産業でも同様。たとえばコンビニ・スーパーは震災を受けた備蓄需要などで足元の景況感は「晴れ」。だが来春以降は震災関連特需やたばこ値上げの効果が剥落し、景況感は「曇り」(利益横ばいか減益)に後退するという。

 また、原発事故の影響で東京電力以外にも複数の業界企業の業績悪化が見込まれる電力と、運賃市況の長期低迷が懸念される海運は、1年を通じて「土砂降り」(景況感悪化、回復のメドが立たない)という最悪の景況感が予想されている。一方で、最高の景況感である「快晴」(業界全体が増益)の業界は1年を通じて皆無だ。

 震災直後の谷こそ脱却したものの、日本の産業界は明確な方向感のない状態。日経平均株価も震災直前の株価水準である1万円台をコンスタントには回復できないでいる。リーマンショック後の金融危機は主要国政府の財政発動をカンフル剤としたが、現在の世界景況感の悪化は欧米の財政問題が背景にあるだけに、大型の景気対策発動も期待しにくい。日本の経営者、株主にとっては予断を許さない状況が続く。

>>>次ページに主要業種の天気予報図
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