眼鏡型ウエラブル端末「グーグルグラス」や、実用化間近の自動運転車、さらにはスマートフォン向け位置情報ゲーム「イングレス」なども同じです。これらサービスの根底には、ユーザーに目の前の出来事に集中してもらう「マインドフルネス(Mindfullness)」という共有価値観が存在します。機械にできることは機械がやり、人間にしかできないことに集中する、ということを彼らは究極的に目指しているのです。
フェイスブックは「人間関係のOS」になった
フェイスブックの場合、共有価値観は「人間関係のOS(基本ソフト)」です。彼らが掲げているミッションは「Facebook's mission is to give people the power to share and make the world more open and connected(人々に共有する力を与え、世界をよりオープンでつながれた場にすること)」。
仮想現実ヘッドセットを製造するOculus VRを2014年7月に20億ドルで買収したこともその延長にあります。この買収は、ユーザーに1日の多くをバーチャルリアリティの空間で過ごし、物理的距離を超えてたくさんの人とつながり、共有してもらうことが狙いだと考えられます。
フェイスブックは今、パソコンにおけるマイクロソフトのウィンドウズOSと同じような歴史的に重要な役割を果たし始めています。パソコンの時代はネットを閲覧するブラウザにユーザーの行動履歴が蓄積されていました。
しかしスマホだと、ユーザーはアプリごとにサービスを利用するため、広告配信会社がユーザーの行動を把握しづらくなっています。そのような中、同社は膨大なユーザー数を武器に、多種多様なアプリに一つのIDでログインできるプラットフォームとして価値を増しています。つまりあらゆるネットサービスの基本インフラとなっているからこそ、人間関係のOSといえるのです。
──ネットサービス企業ではないですが、アップルはどうですか。
1997年に始まった「シンク・ディファレント(Think different)」の広告コピーに、アップルの共有価値観は内包されています。このコピーは創業者である故スティーブ・ジョブズが一度会社を追い出され、後に復帰した際に使われたものです。「誰かと違う自分だけの考えを持とう。そのための助けをするのがアップルだ」という思いがこの言葉には込められています。そしてアップルは今、iPad AirのPRビデオなどを通じ「ユア・ヴァース(Your Verse)=あなただけの小宇宙」を提唱し、既存の共有価値観を深化させています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら