フェイスブックは「人間関係のOS」になった プラットフォームが巨大なパワーを持つ

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眼鏡型ウエラブル端末「グーグルグラス」や、実用化間近の自動運転車、さらにはスマートフォン向け位置情報ゲーム「イングレス」なども同じです。これらサービスの根底には、ユーザーに目の前の出来事に集中してもらう「マインドフルネス(Mindfullness)」という共有価値観が存在します。機械にできることは機械がやり、人間にしかできないことに集中する、ということを彼らは究極的に目指しているのです。

フェイスブックは「人間関係のOS」になった

尾原 和啓(おばら・かずひろ)  1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、リクルート、グーグル、楽天などを経て今年2月からネット広告技術の開発・コンサルティングを手掛けるFringe81執行役員。4月から家族とバリ島に移住、遠隔で業務をこなす。著書に『ITビジネスの論理』など。

フェイスブックの場合、共有価値観は「人間関係のOS(基本ソフト)」です。彼らが掲げているミッションは「Facebook's mission is to give people the power to share and make the world more open and connected(人々に共有する力を与え、世界をよりオープンでつながれた場にすること)」。

仮想現実ヘッドセットを製造するOculus VRを2014年7月に20億ドルで買収したこともその延長にあります。この買収は、ユーザーに1日の多くをバーチャルリアリティの空間で過ごし、物理的距離を超えてたくさんの人とつながり、共有してもらうことが狙いだと考えられます。

フェイスブックは今、パソコンにおけるマイクロソフトのウィンドウズOSと同じような歴史的に重要な役割を果たし始めています。パソコンの時代はネットを閲覧するブラウザにユーザーの行動履歴が蓄積されていました。

しかしスマホだと、ユーザーはアプリごとにサービスを利用するため、広告配信会社がユーザーの行動を把握しづらくなっています。そのような中、同社は膨大なユーザー数を武器に、多種多様なアプリに一つのIDでログインできるプラットフォームとして価値を増しています。つまりあらゆるネットサービスの基本インフラとなっているからこそ、人間関係のOSといえるのです。

──ネットサービス企業ではないですが、アップルはどうですか。

1997年に始まった「シンク・ディファレント(Think different)」の広告コピーに、アップルの共有価値観は内包されています。このコピーは創業者である故スティーブ・ジョブズが一度会社を追い出され、後に復帰した際に使われたものです。「誰かと違う自分だけの考えを持とう。そのための助けをするのがアップルだ」という思いがこの言葉には込められています。そしてアップルは今、iPad AirのPRビデオなどを通じ「ユア・ヴァース(Your Verse)=あなただけの小宇宙」を提唱し、既存の共有価値観を深化させています。

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