「激落ちくん」といった掃除用具が転がっていることもあるが、未開封のままで掃除をした形跡はない。イーブイが片付けに入る前に息子が掃除をしたというが、相当強烈な臭いだったはずだ。
流し台の下にある収納の扉を開けると、調味料、サラダ油、洗剤がズラリと並んでいる。開封済みのものもあれば、未開封のものもあり、同じものが2つ以上あるのも目立つ。それらのボトルには、油や虫の糞がこびりつき、ベトついていた。
リビングにある机の引き出しを開けると、左側には調味料と割り箸が、右側にはペンやハサミなどの筆記用具が入っていた。きっと、この机の上で食事をし、作業にも使っていたのだろう。ここも油汚れに虫の糞が付着し、黒ずんでいる。
「あの切手だけは捨てないでほしい」
リビングは床が見えている程度の物量だが、とにかく生ゴミ系が多かった。一方、2つある和室と1つの洋室は生ゴミではなくモノが多い。和室の畳にはたくさんの木箱が無造作に置かれている。
開けてみると、中に入っていたのは年代モノの食器や陶器など。本棚には、水墨画の作品集、楽譜、新聞記事や図鑑のページを切り抜いてまとめたファイルなどが保管されていた。
多趣味な父親の姿をさらにうかがい知ることができたのは、書斎にしていた洋室だった。部屋を埋め尽くしているモノの8~9割が切手なのだ。
「あの切手だけは捨てないでほしい」
父親から息子にはそう伝言があったという。日本の切手だけではなく海外のモノまで綺麗にファイリングされたアルバムが何冊もあった。ファイリングしきれずに床に散らばっている切手もあったものの、好きなモノに関しては片付けたいという気持ちはあったのだ。
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