「腐敗臭がする父の家」20年ぶりに見た"衝撃光景" 離婚後、独居する「片付けられない父」を訪ねたら…

✎ 1〜 ✎ 33 ✎ 34 ✎ 35 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「今回依頼をしてくださった息子さんは、『自分たちみたいな人間が依頼をしていいのか』と躊躇があったようです」

そう当時を振り返るのはイーブイ代表の二見文直氏だ。

息子はイーブイに依頼をするにあたって、過去に配信された動画を数本見たという。そこに映し出されていたのはゴミ屋敷の住人たちが置かれたどうにもできない状況だった。

精神的な病、高齢による身体の痛み、シングルマザーなどなど……。それに比べて自分の父は入院をするまでは健康である。息子から見る限り特別な事情があるわけではない。

「ただ、だらしないというだけで依頼をするのは申し訳ない」

息子はイーブイにそう吐露したという。脱いだら脱ぎっぱなし、使ったら使いっぱなし。昔からそんな父親の姿を見てきた。

ゴミ屋敷
和室には「捨てられないモノ」がたくさんあるという(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

「同じように『依頼するのが申し訳なかった』と、私たちに頼るまでに時間がかかってしまう人はほかにもいます。その多くは、『お金を払うとはいえ、こんなに汚い部屋を片付けてもらうのは……』という後ろめたさから来るものです。

でも、現場に行ってみると通常のゴミ屋敷となんら変わりはありません。必要以上に自己否定をしてしまっているように思います」(文直氏)

部屋から出てきた生命保険の冊子

ゴミ屋敷連載
この連載の一覧はこちら

月130軒以上のゴミ屋敷清掃をこなすイーブイに片付けられない部屋はまずない。強いていえば、料金の未払いが続く住人くらいだ。部屋の状態によって片付けを断ったことは一度もない。

「ただ、だらしないだけじゃなくて、僕はなにかあったんだと思いますけどね」

リビングの黒ずんだ机を片付けながら信定氏はそう言った。

ゴミ屋敷
2部屋ある和室は足の踏み場もない状況だった(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)

現場に入ったスタッフは5人。作業は約3時間半で完了した。終了間際、和室から生命保険の冊子と『おひとりさまの老後』(上野千鶴子著、法研)という本が出てきた。父親はすぐ目の前までやってきていた“ひとりの老後”を意識していたのだろう。

子どもたちの知らないところで、長い間ひとりきりで孤独に苛まれていたのかもしれない。

ゴミ屋敷
「おひとりさまの老後」を見据えていたのだろうか(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)
ゴミ屋敷
綺麗に片付いた和室(画像:「イーブイ片付けチャンネル」より)
【その他の画像を見る】こびりついた油や虫の糞、大量の切手コレクション……腐敗臭が漂う父の部屋がすっきり片付いた!(40枚)
國友 公司 ルポライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事