中国で高まるブランド信仰、「ステータス」を欲する消費者心理を反映

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第二に安全志向の高まりがあります。中国ブランドの牛乳などに問題が生じたことで、輸入ブランドが好まれるようになった。品質面の保証があると考えているからです。

ブランド品を購入することは、今や一種のステータスです。みんながステータスを望み、「ルイ・ヴィトン」を欲しがる。ヴィトンは中流階級のものです。エルメスは中国で超高級ブランドになっています。2万ドルもする椅子もあっという間にすべて売れてしまい、在庫がなくなる。

だが、中国の消費市場は「ワンサイズ・フィッツ・オール」ではありません。われわれの調査研究によると、実際にリッチな人や「超リッチ」な人はあまりブランド品を買いません。購入しているのはむしろ、リッチになりたい消費者です。中国は高級品マーケットで今や、世界2位の大きさです。向こう10年ないし20年のうちに、世界1位になるでしょう。

中国人は長い歴史の裏付けのあるブランドを好みます。ファッション性などよりも、歴史に重きを置く面があります。フランスワインの購入時にもそうした傾向が見受けられます。たとえば、1855年の格付けで高い評価を受けたボルドーワインを中国人は買う。シャトー・ラ・トゥール、シャトー・ラ・フィットといったワインです。ワインを買うときには品質よりもまず、その年に格付けされたかどうかが大事なのです。

ブランドは買う人にとってのステータスです。同時に、「レガシー」でもある。シャトー・ラ・フィットを買ったら、あるいは世界に名を知られたボルドー・グランクリュを買ったら、また、100年以上の歴史のある日本メーカー製の牛乳を買っても、それはまさに1つのステータスなのです。そこには世界の歴史の断片を買ったという意味もあります。

--特に欧米の消費者の行動と異なる点は。

店に入る前からすでにいろいろなことを決めています。欧米や日本の消費者は店に入ってから、シャンパンを買おう、あるいは化粧品を買おうなどと決める。たとえ、コンビニエンスストアでも、入店後に決めるケースがほとんどです。フランスの消費者がシャンパンを買う場合、2人のうち1人は店に入る前に購入するブランドを決めてはいません。

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