マックスむらい、「議事録作成係」からの快進撃 「営業経験」の通過点的価値とは?
1日8時間タイピングし続けた日もあったが、腐ることなく、会議の内容をまとめ、課題を整理した。1年が経つ頃、そのプロジェクトの全貌と詳細を誰よりも把握し、営業に同行すれば面白いように契約が決まるようになる。やがて、プロジェクト全体の運営責任者を任され、数億円単位の契約をばんばん決めていく快進撃が始まったのだ。
「自分に都合のいいタイミングでチャンスが訪れるなんてこと、誰にでも起きるわけじゃないんですよ。自分の経験から言えるのは、『やるヤツはどんな状況にあってもやる』ってこと。仕事を与えられなくても、自分で仕事を作っていくんです」
その哲学は自社のスタッフマネジメントにも表れている。村井氏は、AppBankの社員たちには、「頑張れ」とは言わず、むしろ、「休め。自分がやりたくなったらやれ」としか言わない。
「やるヤツ、やらないヤツの両極に分かれますが、そのまま腐っていくだけなら淘汰される。自分で跳ね返せるヤツにならなくては、その先には行けませんよ」
仕事は「自分が飽きないように」するだけ
ガイアックスでの執行役員就任を経て、村井氏は、子会社のGT-Agency設立を任される。占いコンテンツ商材を企画し、自分と取締役のたった2人で、1年半の間に450社と契約。設立2年目で2億円近い売り上げをたたき出す。
「1日8件ものアポをこなす毎日でした。つまり、1日に8度も同じことを話し続けたわけです。そんな生活に自分が飽きないよう、『1社あたりに割く時間をどこまで減らせるか』に注力しました。ムダな部分をガンガン削り、最終的には伝えたいことを10分間に凝縮できるまでになりましたね」
濃密な10分間の作り方を習得したこの経験は、AppBank設立後に大きく役立つ。TV番組に出演した際、短い時間の中で表現しきる力が評価されたのだ。
「営業時代に集中してブラッシュアップしたことで、自然と身に付いたんでしょうね。以来、いろんな番組に出まくりましたが、こうした過程が現在の“マックスむらい”の動画配信につながっていきました」
一方、仕事に対するきっぱりとしたスタンスにも、営業時代の経験が生きている。ガイアックス時代、最後の最後に値切ってくるような会社と付き合ってもムダだと気付いた。
「そういうクライアントのために、面倒くさい経験をたくさんしました(笑)。でも、おかげで最後の最後に細かいミソを付けてくるような会社を相手にすれば、時間を割くだけで利益にならず、付き合ううちにプロジェクトそのものがダメになるとわかった。逆に、こちらの提案にすぐOKを出すクライアントと付き合えば、事業の精度はアップし、よりいいクライアントとつながるんですよ」
「カネをもらえるから」という理由だけで仕事をすることはない。やりたくないと思った時点で、勇気を持って断るという。やりたくない仕事を続けることで自分自身がやる気をなくす、そのほうが問題なのだ。