なぜ東京都知事選では政策が重要視されないのか 日本における「東京の真の役割」とは何なのか

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その結果、15~19歳、20~24歳、25~29歳の実際の女性の数が少ない地方では、その年齢層の女性の出生率は高いので、合計特殊出生率は高くなるが、実際の出生数は少なくなる。逆に、東京では、15~19歳、20~24歳、25~29歳の層の出生率が地方に比べて極端に低く、その数字が足を引っ張って、合計特殊出生率が低く出るが、20~29歳の女性の人口自体は地方に比べて圧倒的に多いので、率は低くても出生数自体はそれなりの数があることになる。

しかし、これは、私の解釈からすれば、地方にいれば子どもを産んでいた可能性の高い女性のほとんどを東京が集めてしまい、その結果、彼女たちの出生率が非常に低くなったのであり、これこそまさにブラックホールであり、東京ブラックホール論は見かけ以上にもっと大きなインパクトを日本全体の出生数に与えているのである。

もちろん、地方社会における女性への圧力は望ましいものとは到底言えないし、その呪縛から逃げ出した女性の駆け込み寺が東京だ、という解釈も成り立つ(私の想定する行動モデルであれば、なおのことこの解釈は当てはまる)から、ブラックホールという語感とは別にそれは望ましいものである可能性もある。

ただ、事実として、東京はとてつもないブラックホールであることは間違いなさそうなのである。

国民にとって重要な選挙という認識がなされていない

さらに、東京だけでなく、都市部への移動はやむをえない、大学で勉強するため、仕事のために、地方から出ざるをえない、ということで、良い大学や良い仕事のない地方に原因がある、という見方もある。

だが、私はそうは思っていない。もう1つ、行動経済学的な観察として、地方の若者の多くは、大学に行くため、就職のために、東京に行くのではなく、東京に行くために、東京の大学に行き、東京で就職するのである。東京でなくてはだめなのである。

大学だけなら地方にいい大学はいっぱいあるし、むしろ地方国公立大学の方が東京の有名私立大学よりも教育環境としては圧倒的にいいし、企業の人事もそう評価している。

でも、そうじゃない。多くの若者は東京で暮らしてみたいのである。東京という魔物にひかれているのである。だから、東京は罪深い、あるいは、東京はすばらしいのである。

人々の行動、とりわけ、結婚、出産という行動を政策や経済的インセンティブでは動かせないと私は思っているし、多分、それは現実の認識として正しい。そうだとすると、東京というものの役割、日本経済、日本社会における役割、それはとてつもなく重要であり、日本全体への影響は企業収益などの数値的な経済的影響などの何十倍も大きい。

それほど重要な東京であるから、本来であれば、都知事選挙は日本国民全体にとって重要であるはずなのだが、現状ではエンターテインメントとしてしか重要性を認識されていない。そこが、都知事選挙に見る、日本の大問題なのである。

(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬論を語るコーナーです。あらかじめご了承ください)

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