「僕は、家族や夫婦や恋人など人間関係の枠組みに縛られることが苦手で、本当にそれが必要なのかと疑ってすらいます。
仕事で接する患者さんやご家族には、家族という枠組みにとらわれて『家族だからやってくれるはずだ』とか『家族だから私がやらなくては』と、こじれたり、抱え込んで苦しんだりしている人がたくさんいます。
加えてカフェでお客さんが話している悩みは、夫婦や恋人のことが多い。『夫婦だから許せない』とか『恋人のはずなのにひどい』とか、関係性の枠からズレることに不満や不安を感じる。
僕は日頃から、人は枠組みで関係性を縛るからこそ、問題や苦しみが生まれるのではないかと疑問を持っています。だからみんなが関係性の枠組みから解放され、個々のやりたいことに忠実になって、自分らしく暮らせばいいのに、と思うんです」
人々の幸せを少し離れた場所から眺めたい
確かに、糟谷さんが取り組む看護事業にしても、カフェ事業にしても、家族などの強い人間関係の周辺で「他人同士がつながれる仕組み」をつくることをひとつの目的としているように見える。
それは裏を返せば広く緩やかなつながりをつくることで、家族や夫婦、恋人のような、強い結びつきを解いてゆく試みなのかもしれない。

「そうかもしれません。僕は密な関係でお互いを縛り合うよりも、皆がワイワイと楽しそうにしている場をつくって、それをちょっと離れたところから見ているのが好きです。
個人的にも、ひとりで暮らして、距離感を保ちつつ人間関係を築くのが性に合っています。だからこそ、この社会に関係維持のために嘘をついたりしなくてもいい、流動的で風通しの良い人間関係であってほしいと願い、それが実践される場をつくりたいと思うのかもしれません。
僕は自由な人間関係のなかで助け合い、個々が不安を感じずに生きられるような社会の構築を目指して、仕事をしています。少なくとも医療や看護に関しては、抱え込んで苦しむ人を減らしたい。
もし自身や家族の病で孤立し、苦しんでいる人がいたら、行政の支援なども活用して、頼れるところは人に頼ってほしいですね。僕もそうしていますから」
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