天然木の家に「今はひとり」42歳起業家の暮らし 「人が好き」でも家族・夫婦の枠組みは息苦しい

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気持ちの向くままに読みたい本を読んだり、映画を見たり、そんな時間が創造性を高めるのだろう。夏には涼しい木漏れ日、冬には温かい暖炉があり、興味や思考の軌跡が集積されたオブジェのような本棚がある。自宅で憩う糟谷さんは充足して、リラックスしているように見える。

難病の母がいるため、実家の近くに家を建てた

家を建てたのは2018年、糟谷さんが36歳のとき。きっかけは結婚だったが、一軒家を構えようと思った背景には親の病気の問題もあったという。

「僕が起業した2015年と時を同じくして、母が筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病を発病したので、どうしても近くにいなければならない状況もありました。そこで、結婚を機に実家の近くに家を建てたのです。

本音では躊躇もありました。子どもの頃から長男であることのプレッシャーを感じていたので、実家の近くに家を建てることが、自分を縛ってしまうようで怖かったですね」

畳敷の2階
2階は畳敷で会社の研修にも客間にも使いやすい(写真:大澤誠撮影)
キッチン
ひとりではあまり料理しないが、友人が来た時に役立つキッチン(写真:大澤誠撮影)

糟谷さんの経営する会社のメイン事業は、在宅看護の提供である。カフェも一緒に経営する理由は、医療者と患者の垣根をなくし、また病を得た人と、健康な人のどちらも幸せを感じる地域社会をつくるという目標ゆえ。

そういった会社を経営する糟谷さんの母が、起業と時を同じくして24時間の看護が必要となる難病を発病してしまったことは、偶然とはいえ、あまりに厳しい試練だ。

身近な人が病気になると、そのケアのために金銭や時間、そして心身にも負担がかかる。しかしケアの専門家だからこそ、また家族が難病を抱えているからこそ、家族や夫婦というつながりが、いかに重要かということも、実感しているのではないだろうか。

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