“社長公募”のユーシン、社長交代を延期した理由とは--田邊耕二社長に聞く
--「社長不適格」という判断もありうるのか。
彼の評価は今のところ白紙。社長に就けるかは100%ではない。当面はメキシコ工場のほかに、仕入れ先や納品先を回っていろいろ交渉をしてもらう。仕入れ先や取引先の評判を聞いて、八重樫君の適性を見極める。2つの結果が出るのに、最低半年はかかる。
--自動車業界とはまったく関係のない人を採用したのだから、業界の構造を理解するのに時間がかかるのは当然では。
確かにそうだが、最初の期待は「社長はトップセールスマン」。取引先にとって、即断即決ができて、いちばん信頼できる営業相手は社長だ。その社長に自社製品の知識がなければ信頼してもらえない。
八重樫君を社長候補に選んだ理由はいくつかある。1つは岩手県立盛岡第一高校で野球部のキャプテンを務め、甲子園に出場。その後は浪人せずに東京大学に進学し、野球部のキャプテンと4番バッターを務めた経歴を持っている。野球部では多くの部員を統率してきた。にもかかわらず東大に入ったということは、野球の練習だけでなく、勉強もしたということだ。アメリカ人と結婚しており、英語も流暢だ。部活、官僚、会社のマネジメントはそれぞれ違うが、“地頭のよさ”があれば乗り越えられる。
--もし八重樫氏がダメだったら、ほかに候補者はいるのか。丸子氏はどうか。
八重樫君のほかに社長候補はいない。そもそも丸子君は技術者として採用しており、経営的な側面は見ていない。当面は営業の八重樫君、技術の丸子君という区分けでやってみて、ダメだったら補佐をつけるなど組み替えていく。ただ、今後の状況次第では逆転もないことはない。上場企業として、今後いちばん業績が伸びる体制を敷くことが義務だ。八重樫君より丸子君のほうがいいとなれば、そういった体制を取らざるをえない。