「先延ばし癖のある部下」がみるみる変わる手法 人の癖を理解して、行動変容を促すナッジ

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行動特性Incentives:損をしたくない心

人々に努力を促すインセンティブはお金とは限らない。人は損失を強く回避しようとする行動特性を持つ。カーネマンとトベルスキーが提唱したプロスペクト理論は、状況に応じて人が確率を歪んで認識することを導きだしたものだ。この理論には3つの認知的特徴があり、その1つに損失回避性が含まれる。

投資家は往々にして収益が出ている時、利益確定に動く。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとして大きな投資判断を行う。これは損失回避性が働いているためだ。

では、この特性を考慮して健康診断で社員の生活習慣病を防ぐためには、どちらの表現が効果的だろうか?

A:1日の食事を2000キロカロリーにすれば、あなたは生活習慣病になる可能性が低くなり、健康状態は良くなります【利得フレーム】

B:1日の食事を2000キロカロリーにしなければ、あなたは生活習慣病になる可能性が高くなり、健康状態は悪くなります【損失フレーム】

答えはB。損失フレーム表現は行動変容に効果的であり、さまざまな研究や自治体の活動で報告されている。脳科学を使った実験では、損をすると脳は痛みを感じる部位が反応する。つまり、損失は痛い感覚と同じなのだ。

超過勤務の削減と離職率低減につながったナッジ

行動特性Norms:人は組織の輪を乱すのを嫌う

人は集団から非難されたくない欲求をもっている。そのため多数派の意見に従ったり、自分の行動が他の人と違うと居心地の悪さを感じたりするのだ。これは不平等回避性と呼ばれ、自分と他者の利得に格差があることを嫌う特性を持つ。

熊本地域医療センターは、ノームの特性を活かしたナッジにより、超過勤務の削減と離職率の低減に成功している。病院では日勤と夜勤の勤務交代において、交代後も仕事をしてしまうことが超過勤務要因の1つであった。

そこで、攻守が入れ替わるアメリカンフットボールから着想を得た院長の発案により、看護師のスクラブ(ユニフォーム)を、誰が見ても違いがわかるように日勤は深い赤色、夜勤は深緑色の2色制に変更したのだ。

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