「先延ばし癖のある部下」がみるみる変わる手法 人の癖を理解して、行動変容を促すナッジ
行動特性Messengers:リスクを読み違えてない?
Messengersとは、誰が情報を伝えるかによって判断に影響が出る行動特性を示す。人は判断するとき、思い浮かぶ記憶で対応する。そのため、テレビやSNSでインフルエンサーや信頼する人が発信した、入手しやすい情報を優先して判断してしまう。この特性を利用可能性ヒューリスティックと呼ぶ。
利用可能性ヒューリスティックは時に間違えた判断を導いてしまう。例えば、ニュースやSNSで取り上げられることは思いつきやすく、よく起こる事だと思い込む。
また、成功する事例ばかり見ていると、根拠なく上手くいくと思い込んでしまう。この場合、成功しかイメージできず、リスクが頭から抜けてしまう。このリスク軽視は決定的なミスを引き起こす。
スタートアップや新規事業でも、自分たちは順調にいくと錯覚することがある。特に伝統があり、長年好調な業績を重ねている企業は楽観的になり、リスクを軽視しやすいことが報告されている。
楽観的主義を抑える有効な手段
部下やチームがリスクを軽視しているとき、どんなアドバイスが必要だろうか? ダニエル・カーネマンは楽観的主義を抑える手段として「死亡前死因分析」が効果的だと『ファスト&スロー(下)』で示している。
では、カーネマン式の取り入れ方を説明しよう。プロジェクトが公表される前にメンバーを集めて欲しい。そして「1年後、このプロジェクトはローンチするが大失敗に終わる。さて、何が要因で失敗するのか? その経過をイメージしてまとめよう」と、メンバーに伝えて話し合うのだ。
メンバーから「為替や環境が激変してプロジェクトが成立しなくなった」「土地が買収できなかった」といった要因が上がったとしよう。この失敗のすべてについて回避策や発生時の影響を軽減するプランを全員で考え、プロジェクトの計画に盛り込むのだ。
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